vol.14 なんと延長50回!?まさに“死闘”で幕を閉じた2014高校野球

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

健康管理を問題にするならそもそも解決するべき順番が違う


いろいろと考えさせられる「夏の高校野球」だった。最後は、舞台を甲子園から明石に変えた軟式野球だったとはいえ、延長戦の“日本記録”が更新された。準決勝の第2試合。中京(岐阜)−崇徳(広島)の一戦は、3日間、それぞれ15回を戦っても決着が付かず、4日目にやっと、勝負がついたときにはイニング数は50を数えていた。
 勝った中京の松井投手も、敗れた崇徳の石岡投手も、4日間にわたる投手戦を一人で投げ切った。しかも、最後決着がついた50回まで、スコアボードは「0」行進である。
 確かに軟式野球は点が入りにくいとは、よく言われる。あくまで硬式に比べてではあるが、打球が飛びにくい、ボールが軽いため、投手の腕や肩への負担が軽減される…。その点についてはそうなんだけれど、投手の立場で言うなら、体全体を使って投げないといいボールが行かないということは硬式でも軟式でも違いはなく、4日間、しかも1日15イニングを投げ続けるというのは、まともなことではない。よほどの体力がないと乗り越えることができないことだろうと思う。
 ことがこれほど大きな報道となって、さすがに目をつぶっていてはいられなくなったのだろう。高野連の周辺からは、投手の投球制限やタイブレーク制の導入を真剣に検討すべしという声が日増しに大きくなってきた。

 実はこのタイブレーク制、硬式の方の「全国選手権」が始まる前から、「またぞろ」という感じではあったが、一部で声が上がっていた。そのときの反応は、「考え方は分かるけれど、何となく受け入れられないのではないか」と声が多かったが、この軟式の事態を受けて、タイブレーク制を採用するかどうかの議論がまた再燃しそうな勢いだ。
 ただ、選手(特に投手)の健康管理、体調管理を言うのであれば、今回の軟式野球の延長戦は、もとよりだが、個人的には、4日間の連戦の末に勝ち上がった中京が、崇徳を下したその日、ほんの2時間半後に決勝戦を“ダブルヘッダー”で戦ったことの方が、実は問題は大きいのではないかと思う。
 結局中京は、崇徳との延長50回を一人で投げ切った松井投手を、先発こそさせなかったが、リリーフで起用。松井投手は、ピンチを乗り切り、見事優勝投手となったからよかったようなものの、このスケジュールは、酷としか言いようがない。やれ身体が、やれルールが、などというよりも、こういう時こそ臨機応変に高野連は対応しなければならないのではないか。
 運悪くというか、決勝戦が行われた日は8月31日。全国の多くの高校の夏休みはこの日で終了。9月1日から授業を再開するという学校が多い。だからこそ、この日でなんとしても終わらせたかったという事情があるのは容易に想像がつくが、それこそ主客転倒、本末転倒という気がする。準決勝が終了して中一日おくとか、あるいは、どうしても授業に影響を及ぼしたくないというなら、翌週の日曜日まで決勝戦を延ばしたっていいと思うのである。
 それができないなら、“問題”の本格的な解決にはならないと思う。

スローボール、投げたっていいじゃないか

 一方、優勝候補と目された高校が早い段階で次々と敗退した今年の夏の甲子園で、試合の勝敗とは別に大きな話題になったのが、超スローボールと、大差がついたゲームでの盗塁の是非だった。いずれも、インターネットの掲示板やツイッターでのやり取りが主だったが、はっきり言ってしまえば、こんなどうでもいいことで盛り上がるSNSの世界。ネット世界の不思議をあらためて感じるのである。
 超スローボール。好きな時に投げさせてやってくださいよ。やっている選手たちは、それを不愉快とは思わないですよ。バカにされたとも思わない。そんなことにイラついて、打撃を乱す選手がいるなどと考えるのは、見ている大人だけ。アウトサイダーたちが、そんなことでいちいち騒ぐなと言いたい。大差がついた試合での盗塁だって同じ。普段はメジャーの試合とか見ないくせに、「メジャーでは、それが不文律」と都合のいいところだけ持ち出して、批判するんじゃない。石川県大会の決勝で星稜が9回に8点差を逆転して代表となったことを見てもわかるように、何点あっても何が起こるかわからないのが高校野球。大差があっても盗塁をしてもいいし、スクイズをしてもいいんです。
「つまらんとこだけプロのまねをする」と、よくアマチュア選手を批判する人がいますが、そんな“批判家”に言ってほしい。「無用なマナーとか、エチケットだとか、つまらんところだけプロを真似ろとか、事情も知らずに言うんじゃない」と。

バックナンバーはこちら >>