vol.28 開幕!ハリルジャパンに負けるな日本プロ野球

_コラム

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

フレッシュな顔ぶれにやや欠ける今年のプロ野球


さあ、プロ野球の開幕だ。とはいうものの、なんか、盛り上がりがイマイチという気がしないでもないが、そんなことを言っていないで頑張っていきましょう。
監督が代わって、その初戦を戦うハリルホジッチ率いる日本代表が……いかん、これはサッカーの話。ケガから復帰のゆづくんが復帰戦でいつも通りの滑りができるか……こっちはフィギュアスケートの話。3月27日、プロ野球開幕日は、気になるスポーツイベントが満載の1日となった。
地上波で中継されたのは、日本テレビ系列の巨人−横浜DeNA戦だけだったが、これでまた単純に視聴率だけを比較され、プロ野球人気、巨人人気の低落に結び付けられ、辛口コメントに生きがいを感じているネガティブな方々の格好の餌食になってしまうのである。

実際のところ、レジャーの多様化もあって、テレビ番組そのものが、そのジャンルに関係なく20パーセントの視聴率をとれば「大ヒット」と言われる時代。これからほぼ毎日のように試合を続けていくプロ野球よりも、1年のうちにほんの数試合しか行われないサッカー日本代表の試合を比べることが変な話。私だって、某野球専門誌の編集長をやっていた時代も、サッカー日本代表の試合があれば、そっちを見ていました。
ただ今年の野球界は、今のところ、どうも黒田博樹投手(広島)の話では大いに盛り上がるのだけれど、他の話題となると、なんか、それほどでもないなと感じてしまうのが正直なところ。その辺りにちょっとだけ、例年とは違う物足りなさを、私は感じている。
確かに、注目されるルーキーもすぐに出番をもらえるような選手が少ないし、例えば、複数球団の指名を受け、抽選で北海道日本ハムに入った有原などは、大学時代から不安を訴えていた右ヒジの違和感があったためにキャンプは二軍スタート。一軍での登板は大幅に遅れそうだ。その点でも新鮮さに欠けるのは間違いない。
結局、その動向が気になる選手は、やっぱり黒田、ということになるんだろうな。こればっかりは仕方がない。

黒田で注目される広島はかつてスポーツ先進県だった

まあ、故郷である広島が注目されるのは悪い気はしない。だからといって、23年間、優勝ができなかったチームが優勝候補の筆頭などと持ち上げられても、逆にどこか違和感を持ってしまうのだ。実際のところ、黒田が入った投手陣は強力になったとは思うが、抑えに実績のある投手がいないし、打線にいたっては、オープン戦でも貧打ぶりを露呈していたし、なにより、昨年の本塁打王であるエルドレッドのひざの故障による離脱が痛い。おまけに、昨年途中から、そのエルドレッドや退団したキラの不振をカバーする活躍を見せたロサリオまでキャンプ中に起きた盲腸炎の影響で、出遅れになる。
新外国人であるグスマンには期待したいが、オープン戦の内容を見ても、不安定なところが多い。いきおい、日本人選手たちに期待がかかるのだが、若手選手の成長は思い通りに進んでいないという感じがするのだが、どうなんだろうか。ネガティブに考えすぎだろうか。

かつて、広島はスポーツ先進県だった。野球ではカープは弱くても、高校野球では広島商、広陵などの名門校がしのぎを削り、何度となく、甲子園で勝者となった。サッカーでも、今のサンフレッチェ広島の前身である東洋工業が創設されたばかりの日本サッカーリーグの初年度から4年続けてリーグチャンピオンになっている。当時、“サッカー御三家”といえば、静岡、埼玉、そして広島といわれていたのだ。陸上でも、三段跳びのチャンピオンである織田幹夫さんを輩出し、水泳でも多くの五輪メダリストを産んでいる。
先日、某テレビ局の番組で、今年のスポーツ界は広島が熱いという特集をされていたが、古くから広島に住んでいる人は、なにをいまさらと思っているかもしれない。良くも悪くも高いプライドを持っているので、「広島のスポーツは昔から熱いゼ」と感じていることだろう。
そうはいっても、昨今の広島スポーツ界が多少下火になっていたのは紛れもない事実なのだが、そんな古くから応援している人も、今また、新たに応援したいと思っている人もどちらもそろって楽しく観戦できる舞台であってほしいと思っている。
と、コラムの原稿を準備していたら、野球観戦中にファールボールが目にあたり失明された方の裁判があって、球団側に多額の賠償金を支払うように、という判決が出たのをニュースで知った。これはプロ野球界にとっては、驚きの判決だったと思う。次回のコラムは、この件について触れてみたい。

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