vol.34 サッカー、どこに行ったフェアプレー(パート2)

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

組織として体をなすのかが疑問のFIFA


 前回のこの項で、「サッカーにおけるフェアプレーとは…」、という話を書かせてもらったばかりだというのに、今度はプレーヤーではなく、その組織全体に及ぶ、アンフェアな行為について書くことになるとは、自分自身、思っていなかった。
 ニュースなどでご存知の通り、国際サッカー連盟(FIFA)の役員ほか関係者の多くが摘発されたことは、驚きとともに、なぜか「やはり」という思いを持たざるを得なかった。
 FIFAが賄賂に汚染されているというニュースはかねてからあった。これまで、いろいろな場所で取りざたされてもきたので、関係者ならずとも、私同様「やはり」という思いを持たれた方はたくさんいただろうと思う。
 報道によると、約20年間にわたり、日本円にして百数十億の賄賂が、FIFAの副会長をはじめとする様々な決定権を持つ役職を務める人間に渡っていたのだという。
 まだ捜査は続いていくということだが、近年では、来年に迫ったワールドカップ、さらにその4年後の開催国決定に関しても、これらの賄賂の影響があったのではないかと噂されているのだ。
来年のロシアはまだいいとしても、その4年後の開催国がカタールに決まったことについては、当初から疑問の声が多く上がっていた。近年のワールドカップは、北半球における夏の開催が原則となっている。
 それはサッカーにおいて最も主要な欧州各国のリーグが、秋から初夏までを1シーズンと定めて活動しているからなのだが、カタールが開催国に決まると、その気温の高さゆえに夏の開催を危ぶむ声が上がるようになったのである。

 もっともな話で、夏のカタールは日中の気温は40度を超え、ときに50度近くまで上がるという。これはピッチでプレーする選手たちにとっては地獄の暑さ。これで90分を最高のプレーを見せろというのが無理な話。すぐさま、「選手のことを全く考えていない」「下手をすると死者が出るぞ」という声が上がるのも、むべなるかなで、こういう信じられない決定をする人たちには、表に出てこない何か特別な力が働いたに違いない、と叫ばれ続けてきたのだ。
 何か特別な力、これこそが不自然な優遇、つまり地位であったり、お金であったり。そういう口にはできない特別な利益を得たことが、一般的に考えると不自然な決定を生んだということなのだ。カタールに決めた人たちは、このごに及んで世の中の批判をかわすためか、すべての試合を夜に開催するとか、最近では冬の開催に時期の変更も考えていると言い始めたわけだが、これらを含め、今回の逮捕劇で今後どのように展開していくか、非常に興味深い。

UEFAの出方次第では、大きな改変を迎えることになるかもしれない

 それでも、これだけ側近ともいえる人たちが逮捕されているのに、ブラッター会長が会長選挙で五選されたのはなぜか。日本人が大好きな“責任論”に立ち戻ると、選挙に立候補することそのものが信じられないことなのだが、逆にいうと、「自分は無関係。自分は潔白である」というアピールをするためにも、ブラッター氏は辞退するわけにはいかなかったのだ。さらに言うと、逮捕劇が会長選のわずか2日前の出来事だったこと。これが1カ月程度でも前だったりすると、他の有力候補が出馬した可能性が高い。今回のヨルダンのアリ王子ではなく、ここにそれなりに力を持っている有力候補がいれば、選挙の結果も違った形になったのではないかと思う。

 有力候補――、真っ先に声が上がるのが欧州サッカー連盟(UEFA)のプラティニ会長であろう。FIFAの横暴に対して常々批判的な声を上げてきたUEFAは、そのプラティニ会長をはじめ、ブラッター氏が五選されるならば、FIFAからの脱退も辞さずという声を上げてきた。
 さて、実際にブラッター氏が五選された後、UEFAはどう動くか注目されるところだ。私は以前、2004年にギリシャがアプセットを起こして優勝した欧州選手権サッカーを観戦するチャンスをもらった。決勝の相手が開催国のポルトガルということもあって、完全アウェーのムードの中、堅守からのカウンターという戦法で、ギリシャは見事に初優勝を手にしたのだ。その時のポルトガルの盛り上がりを思い起こすと、UEFAがFIFAを脱退して、欧州選手権をメーンイベントにして運営を続けられるという思いを持つのもわかるし、現実として決して無茶な話でないとも思うのである。

 さて、ブラッターの五選。これをFIFAの「終わりの始まり」という人もいるが、今後どうなっていくのか、全く予断を許さない状況が続くのだ。
 と、ここまで書いたところで、藤川球児の日本復帰、それもうわさされた阪神復帰ではなく、独立リーグの高知でプレーするとのこと。驚いた。藤川と親しい人に聞くと、「オレの性格をわかってないねん」と、やんわりとだが阪神の交渉の仕方を否定的に語っていたという。阪神サイドはまさに「なんで?」と口あんぐりだろうが、黒田といい、藤川といい、“男気”がブームになりそうな2015年の野球界である。

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