vol.40 夏、甲子園に心躍らせる日々がもうすぐそこに

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

エルニーニョが冷夏を呼んでくると言ったのは誰だ?


 梅雨が明け、一気に暑い日がやってきた。
 今年も猛暑となるのだろうか。エルニーニョ現象が起きている年は、気流の関係もあって、冷夏となることが多いと、どこかの気象予報士が6月に言っていたように記憶しているが、ここ数日の気温を見たら、間違っているに違いないと思う。
 兎にも角にも、夏である。野球の世界に少しでも関わりを持ったものなら、夏=高校野球となる。実際に自分が高校球児だった人も、自分の子供や親戚が野球をやっていた人も、野球には一度も関わってないけれど、故郷の学校や、中には母校が甲子園に出場してから、気になって、ずっと見ているという人だっているだろう。
 高校野球に多くのファンがいるのは間違いない。

 今年も、沖縄を皮切りに、これから甲子園出場校が決まっていく。その沖縄は、興南高が、5年前の春夏連覇以来の出場を決めた。私が今、東京六大学野球の公式記録員を務めているのは、プロフィールにもある通りだが、昨年、私の母校である立教大の主将を務めていたのは、その時のメンバーである我如古選手だった。
 昨年は、立教大のみならず、法大では安慶名選手、大学野球のもう一方の雄、東都大学リーグでも、興南のエースだった島袋投手がキャプテンを務めるなど、興南の“あの時”のメンバーがチームの中心となってプレーしていた。
 今年の六大学は、興南優勝の翌年の夏を制した日大三高のメンバーが目立ち、キャプテンだけでも、慶応、横尾、法大・畔上、立大・鈴木と三選手が務めている。甲子園で活躍し、大学に進んでからもチームを引っ張る活躍をしている証明だろう。
 これらは一つの例にすぎないが、日本の野球文化は甲子園の高校野球とは切っても切れない関係にある。
 あたり前のことだが、プロ野球もしかり。甲子園に出たかどうかは置いといて、高校時代に野球部での経験なしに、すなわち。甲子園を目指して練習した日々なしに、プロ野球に進んだ選手なんて、皆無と言って街ないないだろうと思う。

甲子園を目指すことが野球文化、習慣の向上を連れてくる

 少し前のことになるが、韓国プロ野球で監督を務めていた、かつて日本球界でプレーしていた方に話を聞いたことがある。
 オリンピックやWBCでは韓国に対して苦戦が目立っていたが、両方を経験した監督にとって、日本野球と韓国野球の違いはどこにあると思いますか、と。
 帰ってきた答えはこうだった。
 
 「少年野球、高校野球から始まる野球教育というところで、大きな差を感じます。日本の選手は、小さい頃からしっかりと教育されているから、こういう時にはこう動くというのを、言わなくてもわかっている。わからなくても、一つ二つヒントを出すだけで、すぐに理解して、動いてくれる。こっちは、個々の体力、技術は上がってきても、その部分で足りない。だから、ナショナルチームのようなトップ選手が集まるところでは対等にできても、リーグ全体のレベルというと、上がってこないのが実情です」
 つまり、国際大会のような一部のトップ選手が集まって戦う、しかも1試合の戦いであれば、対等に戦うことができるかもしれないが、長いリーグ戦、あるいは同時期に何度も戦うような試合になったら勝てないのではないかという分析だった。
 思い出したのは第2回WBC。日本は第1ラウンド決勝、第2ラウンドと続けて韓国に苦杯を喫したが、決勝では、その韓国を見事に倒して優勝した。その時、知り合いの韓国人記者は、「3回も日本に勝てるとは思えない。優勝は日本だよ」と試合前に言ってきた。上記した、元監督に聞いた話と符合する。
 私は、その野球の素を作るのが、日本の少年野球から甲子園に向けての“野球教育”にあると考えている。
 そんな難しいことを考えなくても、と笑われそうだが、確かに、人それぞれの甲子園の楽しみ方があってもいいと思う。
 それぞれの夏――。今年の夏の甲子園。第97回全国高等学校野球選手権は8月6日に始まります。

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