vol.42 雨に翻弄される野球界

_コラム

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

再び襲った大雨の猛威、日程がどうのという話ではない


 8月中旬までの猛暑、酷暑と呼ばれた日々がウソのように、このところの雨の毎日、肌寒ささえ感じる日々は、すでに9月どころか、10月、11月を思わせる。
 台風の発生も、近年では相当早いペースというニュースを報じていた。大型台風も多く、雨量もまた、例年を大きく上回っている。台風18号がもたらした大雨は、関東以東の地域に大きな被害をもたらせている。昨年、故郷・広島を襲った水災害を想起させるが、あらためて、自然の猛威、恐ろしさを感じざるを得ない。
 被害に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます。
 野球界では、高校野球、夏の甲子園大会が終わり、精鋭を集めたUー18の世界選手権も、決勝まで全勝で来ながら、最後はアメリカに屈してまたも準優勝。少しばかり残念な結果になって終わっている。
 その間、世間では、2020年に行われる東京五輪のメイン会場となる「新国立競技場」の建設見直しの一件から始まって、続いて、公式エンブレムが盗作かどうかで揺れに揺れた。事の経緯は、今さら語るまでもないが、一言でいうなら、みっともない。
 だれも責任を取ろうとしないのも情けない。
 一連の東京五輪に関係する出来事の中で、連日苦い表情を浮かべていたのが、森喜朗元首相。首相当時から、この人が絡むと、どうしてこうも問題が起きるのかと、運の悪さを露呈していた森喜朗元首相だが、なんか、ここに極まれり、という感じがしないでもない。
 野球界の話に戻そう。
 連日の雨のせいで、阪神と広島両チームの日程調整が大変なことになっているらしい。12連戦だとか、19連戦になるかもとか、いろいろ報道されているけれど、ドーム球場を持たない以上、こういう事態は当然ありうるわけで、こんなことが起きて初めてあたふたしている状況は、今更ながら、こちらもみっともないというか……。
 単純に20でも30でも、やらなければ終われないというなら、やるしかない。それが現実だ。

大学野球界でも“老舗”リーグで激変が起ころうとしている

 高校野球が終わり、プロ野球もクライマックスを迎える。大学野球も秋のシーズンが始まった。老舗の東京六大学は12日からのスタートだが、“ライバル”東都大学野球は1週前からすでに始まっている。しかし、この雨の影響で、2週目は試合の開催もままならずという日々が続いた。プロ野球の日程消化に苦慮していると書いたが、こちら東都大学野球も今後、日程の調整に苦慮することになるだろう。
 ところで、その東都大学野球でリーグの運営そのものを揺るがすニュースが報じられている。それは、1部、2部を統合し、現行の勝ち点制ではなく、2試合ずつの戦いのうえで勝率での優勝を決めるというやり方にチェンジするということだ。

 大学野球は、東京六大学リーグのやり方に倣い、ほとんどが同一の対戦では2勝を先勝したほうが勝ち点を得て、その勝ち点の多いチームが優勝というスタイルをとってきた。
 しかし、球場やスタッフの確保の問題。また、学生の本業である勉強の時間を割いてまで平日に野球をやるのはいかがなものかという意見までささやかれるようになって、勝敗によっては、3戦目、4戦目へと増加する可能性もある現行のやり方から、2試合と限定して勝率で勝敗を決しようという方法がじわじわと増えてきているのも事実。
 地方の大学リーグから取り入れられてきたこの制度は、いよいよ、大学野球の先導役だった関東の各リーグにも波及してきたという感じなのだ。
 すでに、東海大や日体大などが所属する首都大学リーグではその方法に変わっている。
 東都大学リーグは「まだ決定したわけではない」としているが、早ければ来年春から、一気に制度が変わる可能性を示しているのだ。
 現実として、東京六大学が優先されている神宮球場の使用問題。さらに神宮第2球場が大学野球では使えなくなっているという状況下にあって、2部の試合は、各大学のグラウンドで多く行われている。
 東都の魅力の一つに、1部2部の入れ替え戦にあったことは否定しないし、その面白さがなくなるのは、少し残念ではあるが、上記してきたように、これも周辺の事情、環境を考えれば、いたし方ないことなのかもしれない。

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