vol.54 日本プロ野球の連勝記録を持っている「南海」と「大毎」、これって今の…?

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

「ゲーム差」では測れない正しい順位

 オールスター戦前の7月12日のオリックス戦でストップしたが、北海道日本ハムファイターズが6月19日の中日戦から球団新記録となる15連勝を記録して話題になった。
 一時は、福岡ソフトバンクホークスの独走で、ペナントレースの興味が薄れつつあったが、一気に縮まり、オールスター・ブレイクを前にその差は「6ゲーム」となった。
 以前にも書いたが、この「ゲーム差」とは、勝率では分かりにくいその差を具体的に「試合数で表すとこうなる」という目安であって、このゲーム差がついているからと言ってそれが純粋に順位を表すものではない。
 例えばこの「6ゲーム差」とは、ソフトバンクと日本ハムが互いに「6試合」を下位のチーム(この場合日本ハム)が全勝し、上位のチーム(ソフトバンク)が全敗したら、「ほぼ、並ぶ」という目安に過ぎない。
 この「ほぼ」が大事で、例えば、オールスター戦終了後、ソフトバンクが全敗して、日本ハムが全勝しても、勝率ではまだソフトバンクが上で「.643」、日本ハムは「.637」となる。ゲーム差『0』が『同率』ということではないのでご注意を。

 ところで、この15連勝の報道の中で、日本プロ野球記録が18連勝で、それを記録したのが南海(54年)と大毎(60年)だ、という話がテレビのスポーツニュースなどで紹介されていた。
 この時、私が思ったのは「今のファンの方、特に若いファンの方に、南海、大毎と言ってピンとくるのだろうか」という疑問だった。
 今の日本プロ野球に「南海」も「大毎」も存在しない。いずれも時代の流れの中に、経営不振などがあって、俗にいう「身売り」をした。
 チームのニックネームを紹介すれば、ヒントになるだろうと思うので紹介すると、南海は「ホークス」、大毎は「オリオンズ」である。

 南海はホークス、つまり福岡ソフトバンクホークスに繋がっている。
 当時のパ・リーグはこの南海と福岡に本拠地を置いていた西鉄ライオンズが「2強」で毎年のように、この2チームが優勝争いを繰り広げていた。南海・鶴岡一人、西鉄・三原脩、名監督とうたわれた2人の采配も含めて、パ・リーグの注目のカードだったのである。
 その「福岡のライバル」が、今「福岡のチーム」となっていることが、古くからのファンにとっては、不思議な因縁を感じているのではないかと思う。

時代の片隅に、しっかりと跡を残した「大毎オリオンズ」

 では一方の「大毎オリオンズ」はどうだろう。
 オリオンズは91年まで使われていたので、分かった方もいらっしゃると思うが、今の千葉ロッテマリーンズに繋がる。
 では「大毎」とは何? と思う人もいるはず。もともと2リーグが分立したときには、毎日新聞社がオーナーとなった「毎日オリオンズ」と、映画会社の大映がオーナーとなった「大映スターズ」という球団があり、この2球団が57年オフに合併。「大」と「毎」をとって、「大毎オリオンズ」となったのである。正式球団名は「毎日大映オリオンズ」。しかし、略称は「大毎オリオンズ」となっていた。

 この大毎が18連勝を記録した60年(昭和35年)といえば、パ・リーグで初優勝を飾った年。監督は西本幸雄さん。ご存知の通り、のちに阪急―近鉄で何度となく優勝を果たしながらも、ついに日本一を手にすることができず、「悲運の名将」とうたわれた方だ。
 この60年は西本監督にとっても初めてのリーグ優勝だったわけだが、ここでも悲運はついて回る。
 勝負どころで出したスクイズのサインが失敗。本塁ベース前でボールが止まり、三塁走者は憤死した。このプレーも一因となって、大毎は、西鉄から移ってきた三原監督率いる大洋ホエールズに敗れたのである。
 
しかも、この年の大毎オリオンズの特長が「ミサイル打線」とうたわれた強打線だったので、スクイズではなく打たせるべきだったという非難が一部で起こり、大映社長で「大毎」のオーナーだった永田雅一氏と西本監督が衝突。西本監督は1年でチームを去ることになった。
「カネも出すが、口も出す」で有名。「永田ラッパ」は聞いたことがある人もいらっしゃると思うが、つまり、誰にでも聞こえるように、雑音も含めて吠える永田オーナーの言動を称して「永田ラッパ」と皮肉を込めて揶揄されたのである。
 それが日本プロ野球の連勝記録を持つ「南海」と「大毎」の当時の姿だった。
 オールスター・ブレイクに、そんな、ちょっと昔の話を紹介してみました。

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