vol.57 リオ五輪で輝いた“旧友”の偉業

柳本 元晴 Yanamoto Motoharu
フリー・スポーツ・ジャーナリスト
立教大学卒業/週刊ベースボール元編集長

広島県出身。1982年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊ベースボール編集部にて、プロ野球、アマチュア野球などを中心に編集記者を務める。91年に水泳専門誌(スイミング・マガジン)の編集長に就任。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪を現地にて取材。98年、創刊されたワールド・サッカーマガジン誌の初代編集長を務めたのち、99年3月から約10年間にわたって週刊ベースボール編集長を務める。2014年1月に(株)ベースボール・マガジン社を退社。フリーとしての活動を始める。2012年からは東京六大学野球連盟の公式記録員を務めている。

水泳の活躍はコーチ陣の分析力の高さにあり

 開幕前は、大きなトラブルが起きるんじゃないかと不安視する声も少なくなかったリオ五輪だが、無事に閉幕した。
 日本は、メダル獲得数が41と過去最多。JOCが目標として挙げていた数字も上回った。金メダルは12。同じく目標としていた14にはわずかに及ばなかったものの、前回のロンドン五輪の7を大きく上回る数字で、ほぼ、目標を達成したと言っていいだろう。
 選手や関係者の努力を安易に数字だけで測るのはどうかという意見もあろうが、4年に一度のスポーツの祭典に、これだけの結果を残したことは、素直に称えられていいのではないかと思う。
 次なる2020年の東京五輪にも大いに期待したいところだが、今回はドーピング問題でロシアが陸上競技への出場を認められなかったり、直前まで出場できるかどうか揺れていた他の競技の選手たちも、当然その調整過程で影響はあっただろうと思われる。
 アメリカと並ぶ“スポーツ強国”であるロシアの状況を考えると、日本のメダル獲得という点においては、大きな利が働いたと思うので、今回の結果で「東京で倍のメダルを」とすでに口走っている関係者の方もおられるようだが、個人的には、「ほどほどにしておいた方が」と言っておきたい。

 これまで日本の競技団体がそれぞれに、綿密な準備、計画を練って、今回の成績に結びつかれたと思うので、ぜひ、これまで通りの“路線”で進めていってほしいと思う。
 綿密な準備計画、そして分析ということでは、今回の五輪でさすがと思うことがあった。プロフィールにもあるように、過去に水泳専門誌の編集長を長くやっていたこともあって、今回の五輪前に競泳チームの監督を務められた平井伯昌コーチにお話をうかがう機会があった。

 ベタといえばベタなのだが、そこでひとしきり各種目の選手の状態をうかがった後、メダル獲得の可能性がある種目をたずねると、「メダル獲得は5から10、複数の金メダル」がその返答。紙数がないので、詳細は紹介できないが、その内容まで、ほぼ平井コーチの説明通り。唯一、”はずれ”と言うのか、ほとんど説明がなかったものが200mバタフライの坂井聖人選手の銀メダル。それだけだった。
 これは日本チームの選手やコーチの頑張りもそうなのだが、そこに至る過程の中で正しい分析ができていたということでもある。そういう分析があってこその結果と言うほかはない。

当時、新進気鋭のコーチたちが見せていた熱い思い

 その坂井選手を指導しているのは早大水泳部の奥野景介コーチ。そして、金メダルと獲得した金藤理絵選手を指導していたのは加藤健志コーチ。私がその水泳専門誌を担当していた時からのお付き合い。
 当時、その専門誌には「コーヂ苑」というコーナーを連載しており、気鋭の若手コーチが「広辞苑」よろしく、水泳の専門用語を「あ」から順に紹介し、最終的には、水泳の「おもしろ・まじめ大辞典」を完成させようという試みだった。
 分かりやすく、時にクスッと笑いをとれるようなウイットを織り込んだ連載は、その専門誌の中でも人気コーナーだった。
 そのネーミングは、当時週刊漫画誌で漫画家の相原コージ氏が「コージ苑」と称して、4コマ漫画で著名な大辞典である「広辞苑」をもじり、「あ」から順に、漫画の事典を作っていくというスタイルで連載していたものを真似たもの。

「コーチ」たちによる編纂で「コーヂ」苑だったのである。
 奥野コーチも加藤コーチも当時の「コーヂ苑」を作っていたメンバー。熱のこもった原稿を提供してくれていた。特に加藤コーチは熱さがあふれる熱血漢で、しばしば予定されていた分量をオーバーしてしまうほど。当時はどちらかといえば下降気味だった水泳界だったが、彼らの熱い思いに、いつか再び隆盛の時が来ると期待をしていたものである。
 その彼らが今回、指導者として大きな結果を残したことは、当時、一緒に“戦ってきた”メンバーとして、大変な喜びでもある。さっそく彼らに、その快挙に対する感動と感謝を伝えるメールを送った。
 
 ところで、リオ五輪に目を奪われている間に、日本の野球界はとんでもないことになっている。独走だった福岡ソフトバンクが北海道日本ハムに脅かされるように時代になるとは…。そして、あの広島東洋カープに「マジックナンバー」が点灯、優勝が目前…。
 次回のコラムは、早めの更新、そのカープについて、書きたいと思います。

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