【緩急自在】vol.2「有名人の力とは」

飯島 智則 Iijima Tomonori
日刊スポーツ記者

1969年(昭44)横浜市生まれ。93年に日刊スポーツ新聞社に入社。96年から野球担当になり、98年は38年ぶりの日本一に輝いた横浜(現DeNA)を担当。00年には巨人担当としてONシリーズなども取材した。03年から2年間は大リーグ担当として松井秀喜選手に密着。05年からはNPB担当として球界再編騒動後の諸問題を取材した。11年から7年間、野球デスクとしての内勤を経て、17年末から再び現場取材を始めた。ネットで「イップスって何?」「引退後の世界」を連載。ベースボールマガジンでもコラム「魂の活字野球学」を連載している。

日本ハムの選手が、球団公式ツイッターに動画をアップしました。9月6日未明、北海道で大地震が起きました。厚真町では最大震度7を観測しています。尊い命が奪われ、負傷した方も多数います。停電や断水などもあって、被災された方は厳しい生活を余儀なくされています。ツイッターは翌日7日にアップされました。栗山英樹監督や選手たちが被災したファンへメッセージを送る動画でした。少しばかり内容を抜粋して紹介しましょう。

栗山監督

北海道の多くの皆さんが大変な思いをされていると思います。言葉で「頑張っていきましょう」という問題ではないかと思いますけれども、一緒にこの北海道で経験させてもらって、大変さは私も含めて選手たちも感じています。(中略)我々は野球を通して皆さんに少しでも元気になってもらう。これしかまずはできないので。できる限り早く試合に復帰して、元気な姿を見せて、みなさんに勇気と元気をお届けしたいと思います。微力だとは思いますけれども、頑張っていきますので、よろしくお願い致します。皆さんも大変だと思いますけれども、どうか頑張ってください。

鍵谷陽平投手(北海道・七飯町出身)

北海道の皆さん、本当に皆さん不安で、まだまだ大変な思いをされている方もたくさんいらっしゃると思いますが、余震に気を付けて生活してください。(中略)皆さんはまだまだ野球を見るような状況ではないと思いますし、それどころじゃないと思いますが、僕たちもいろんな思いを背負いながら試合に臨んでいきます。少しでも皆さんの心の支えというか、何か力になれればいいなと思いますし、今すぐじゃなくても、1週間後、2週間後、1カ月後…皆さんと笑っていられるように一生懸命頑張りますので、皆さんも十分に気を付けて、これからも一緒に頑張っていきましょう。

清宮幸太郎内野手

昨日は北海道で大変大きな地震がありました。その影響で、たくさんの方が被災され、苦しい思いをされていると思います。しかし、そんな中でも、皆さんに勇気や希望を与えることが、僕たちの使命であり正義であると確信しています。ファイターズの掲げている「北海道プライド」を胸に、皆さんと一緒に、この困難を乗り越えていきましょう。

この他にも多くの選手がメッセージを寄せています。

地震の多い日本では、時に自然に太刀打ちできない無力さを痛感させられます。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災…地震だけではありません。さまざまな自然災害で苦しむ人々はたくさんいます。そんな災害が起きた時、スポーツ選手や芸能人など著名な方々がメッセージを出します。募金活動の先頭に立ち、自らも寄付をします。こうした彼らの言葉や行動は社会に大きな影響を与えていると、私は思っています。

有名人は彼らにしかない「力」を持っています。権力や財産ではありません。多くの人々に共感を与える力です。同じ言葉であっても、あこがれの有名人から発せられると注目を引きます。共感を得られます。そして、その共感は社会の力になっていきます。

実際に困難と向き合っている方は野球観戦どころではありません。「野球を通じて勇気を…」などと言われても、何も救われないでしょう。しかし、有名人が思いを発信することで、社会に有形無形の影響を及ぼしていきます。それが困難を乗り越える力になっていく場合もあります。彼らのメッセージには、そんな力があると信じています。

今回も日本ハムの選手だけでなく、多くのプロ野球選手がメッセージを発信しました。アメリカにいるダルビッシュ有投手や田中将大投手もツイッターを通じて、被災者を心配し、勇気づける投稿をしています。彼らの「思いやる心」は多くの共感を呼び、社会に広がっていくでしょう。もちろん我々メディアも、取材を通じて世の中に主張やメッセージを発信していく立場にあります。何を考えて発信していくかが重要になります。自己利益や利害関係ではなく、社会全体への影響や利益を考えて伝えているか。自問自答を繰り返していく必要があります。

北海道では、まだまだ困難の日々は続いていくでしょう。個々にできることは小さいかもしれません。しかし、小さな力を合わせれば大きな助けになる可能性もあります。そんなことを願い、この記事を書きました。日本ハム選手たちが発した言葉の「力」を借りて。

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