【緩急自在】vol.27「ジュニアスポーツの意義」

 先日、少年サッカーを取材する機会に恵まれました。日刊スポーツ新聞社などが主催する「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー決勝大会2019」です。

 本来サッカーはチーム11人ですが、同大会は8人制です。最近では小学生大会の主流になっていますが、この大会が先駆けになったそうです。人数が少ない分、個々の選手がたくさんボールに触れます。実際、試合を見ていても、人数が少ない分スペースが広くあくので選手が躍動しているように感じました。

 また、第1ピリオド(P)と第2Pでメンバーは総入れ替えが基本とあって、数多くの選手が出場できます。どちらのルールも「育成」を主眼とするジュニアスポーツにとっては非常に意義深いものに感じました。

 第1Pに主力を集めるチームもあれば、第2Pに力を集中させる作戦もあります。また、戦力を分散させて安定感を優先したチームもあるようです。あらかじめルールで決まっているのですから、あとは各チームの工夫で対応できます。

 優勝したセンアーノ神戸ジュニアの大木宏之監督が、メンバーを入れ替えるルールについて「チーム力が上がりますね。みんなでやろうという雰囲気が高まります」と話していました。ちょっとした工夫で、大きな効果が生まれるものだと痛感しました。

 さて、野球界でも参考にできるのではないでしょうか。小学生が軟式球でプレーする学童野球でも、今年8月の全国大会から「球数制限」が導入される予定です。投手の投球数が1日70球以内になります。故障防止が主目的ですが、当然ながら複数の投手が登板チャンスを得られます。エース1人だけでは不十分であり、複数の投手育成が重要になります。「出場機会の拡大」という意味からも、意義があるように思います。

 他のポジションも何かできないでしょうか。さすがに全員入れ替えは難しいでしょうが、例えば「12人以上を出場させる」とすれば指導者は選手交代を念頭に置いて采配するでしょう。人数不足のチームはこの限りではないとすれば、可能に思えます。

 現状でもさまざまな工夫をしている大会があります。下級生にチャンスを与えるため「上級生の出場は2人まで」「上級生はバッテリー以外のポジションにつく」といったルールがあり、自然に下級生が主力となる大会も知っています。このような大会が増えていけば幅広い選手起用が可能になっていくと思います。

 小学時代に選手としての可能性は決められません。小学生でもスーパーな選手はいますが、多くは成長の早さに左右されているように思います。成長が早くて体が大きいと有利で、早生まれの子などはハンディがあります。決して野球選手としての優劣ではないところで、チャンスを奪われているような気がします。同級生に比べて成長は遅いが、ものすごい可能性を秘めている子どももいるはずです。幅広い子どもにチャンスを与えるのは、ジュニアスポーツにとって非常に重要な要素だと思います。

 ちなみに私は成長の早い子どもでした。中学入学時には身長170㌢ありましたから、小学生時代には何をやっても有利でした。徒競走でも水泳でも学校代表の選手になり、何ごとにも自信を持っていました。野球も下手でしたが、打球の飛距離は抜群で、変な投球フォームでも力任せで速い球を投げていました。

 ただ、そんな時代は長く続きませんでした。中学に入ると成長が止まり、どんどん大きくなっていく周囲の同級生と力の差が埋まり、ついには抜かされていきました。身長は中学3年の176cmで完全にストップ。次第に自分が普通の能力だと気付き、そのうち普通以下だったと分かってきました(笑い)。もちろん私の努力不足もあるのですが、小学時代の体格で勝負は決まらないと身を持って感じて生きてきました。

本来ならば各チームが対応すればいい問題かもしれません。しかし、さまざまなチームがあり、指導者の考えも多種多様です。真剣に取り組む指導者ほど成果を求めてしまう傾向はあるでしょうし、周囲からプレッシャーを受ける場合もあるようです。なかなか力が劣る選手を出場させる勇気が出ない監督もいるでしょう。

 例えば、こんな場面があったとします。1点リードの接戦で、エースのA投手を続投させれば勝利の可能性が高まるが、リリーフのB投手では力不足に思えます。そこで確固たる信念を持って「Aの故障防止とBの経験のために」と、交代を決断できる監督は少ないのではないでしょうか。

 選手たちも勝利のために全力を尽くしており、敗戦の可能性が高まる采配に踏み切れない気持ちはよく分かります。まして少年野球の指導者は親が務めることも多く、ほとんどが素人コーチといっていいでしょう。手探りの中、試行錯誤しながら悪戦苦闘しています。そして、そうした指導者が少年野球を支えているのも現実です。そんな指導者すべてに確固たる信念を求めるのは無理でしょう。ただ、ルールがあれば他に選択肢はありません。周囲も納得できます。指導者も選手もルールの中で勝利に向けて全力を尽くせます。多数の選手を出すしかないルールにすれば、自然とムードが変わっていくように思います。

 私は球数制限の導入にも賛成しています。学童野球には、それ以外にも多くの選手が出場機会を得られるようなローカルルールを作っていってほしいものです。8人制サッカーを取材しながら、そんなことを考えました。

飯島 智則 Iijima Tomonori
日刊スポーツ記者

1969年(昭44)横浜市生まれ。93年に日刊スポーツ新聞社に入社。96年から野球担当になり、98年は38年ぶりの日本一に輝いた横浜(現DeNA)を担当。00年には巨人担当としてONシリーズなども取材した。03年から2年間は大リーグ担当として松井秀喜選手に密着。05年からはNPB担当として球界再編騒動後の諸問題を取材し、11年から7年間、野球デスクを務めた。現在ベースボールマガジンでコラム「魂の活字野球学」を連載している。共著に小学生向けの「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」(旺文社)。18年12月には著書「イップスは治る!」(洋泉社)を出版。

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