青島健太#3
「政治家・青島健太が部活動の地域移行に汗 スポーツで健康を、健康は国力になる」

HERO'S COME BACK~あのヒーローは今~

現在は参議院議員 元プロ野球選手・青島健太 スポーツ界のためにできること(インタビュー全3回)#3

日本維新の会・青島健太参議院議員はかつて慶大野球部、そしてヤクルト・スワローズの選手として神宮の杜を沸かせた。現役引退後はスポーツジャーナリスト、キャスターと転身し、現在は政治家として、スポーツを通して国に元気を与えようとしている。インタビューの最終回は現在取り組んでいる中学の部活動地域移行の本質と課題について。(取材日・2023年12月1日)

 

■「俺がやるしか、ないだろう」 スポーツで健康に、健康が国力になる

――最終回は青島健太議員の現在の取り組みについてお聞かせください。今、政治家として一番、重きをおいて考えられていることはどのようなことですか?

「国民の健康ですね。若い人だけではなく高齢者の人たちにとっても、健康は大事です。もっと大きく言うと、健康って国力だと思うんです。国力がなければ、経済活動は活性化されない。健康で自分の関わってる仕事に前向きに取り組めるかどうかが、国力そのものなんですよ。だから、日本人をどう健康にしていくかということは日本を元気にして、経済的な繁栄にも繋げていくことにつながると思うのです」

――スポーツにおける課題の一つとして中学校部活動の地域移行問題がありますが、どのような取り組みをされていますか?

「2022年から3年かけて、この問題への取り組みを重点的にやろうという活動が始まってます。顧問の先生の休みが今は全くない。土日にも活動は入るし、平日の午後も子どもたちが帰るまで部活動の指導が続いています。そこから翌日の授業の準備。働き方を見たら、もうとんでもなく過酷な状況に先生が置かれています」

――先生たちの悲鳴も聞こえてきますか?

「もう部活動の顧問をやりたくない、というような声も届いてくる中で、何とかしなくてはいけません。最終的には平日も外部の指導者に見てもらうっていうことを視野に入れていますが、まずは土曜日、日曜日だけその教えられる人に来てもらい、土日の部活動は外部の人に見てもらうっていうことを進めましょうっていう今、アクションが始まっています」

――うまくまだ移行はできていないと感じていますか?

「これがなぜうまくいかないかというと、なかなか十分な対価を払えないし、土日だけで子どもたちを本当に安心、安全に預けられるのかっていう心配も当然あるし、その人材をどう確保するのかということに課題があります」

――土日に大会、公式戦があるので、引率が必要です。

「学校の先生が同行をせず大会に外部の人が連れていくことが本当に中学校の部活動なのかとかという意見もあります。解決しないといけない問題はありますが、一方でメリットも挙げられます。例えば、学校によっては、その競技をやったことがない人が監督をしているケースもあります。でも週末だけ、元・選手だったみたいな人が来てくれたりしたら、子供たちにとってはわくわくする時間だったりすると思うのです」

――プロだった人も来る可能性も?

「さらに上のレベルの指導が待っていたりすると、子どもたちにとって部活動の価値や可能性は高まります。いずれは平日もそういう方々が学校に入ってきて、放課後の部活動も見てもらえるような形になれば理想的です」

■中学部活の危機を救うのは誰なのか?「俺しかいないだろう」

――そういう観点では部活動の地域移行という言葉が一人歩きしている可能性もありますね。

「顧問の先生だけじゃなく、違う指導体制を作って、先生の負担を軽くしながら、子どもたちの部活動の時間を豊かにするにはどうしたらいいのかっていう方法を見つけようとしているのが、地域移行です。週末は総合型のスポーツクラブに行きましょう。なぜなら、ここに指導者がいるからです、というように、地域へ移動するみたいな意味合いの方を呼び名として取っているんです」

――なので、地域移行と呼んでいるのですね。

「文部科学省が言い始めているので、これをどうやってうまく日本流の良い形を作り出すかっていうのも、とても大事なことだと思っています。ここは自分がプロ野球のOBですから、誰がやるんだ、となったら『俺がやるしか、ないだろう』という思いで、取り組んでいます」

――青島さんの部活動への思いはどのあたりから来ているのでしょうか?

「大げさかもしれませんが、今の日本人の良さ、日本人らしさというのは、中学の部活動で作られているものだっていう気がするのです。社会性が芽生えて、またそれぞれの自分の持っている個性をどう自分なりに生かすのかというときに、初めて中学に行ったら、いよいよ吹奏楽部とか、卓球部とか、自分の思いと自分の個性で人生を選択していく」

――同じ思いを持った子たちが集まってくる。

「そこで人間関係が生まれる。1年生、2年生、3年生という世代間の交流もあったりして、悪い面も強調されることも多いんだけど、先輩、後輩っていい面もあるんですよ。先輩がいろいろ教えてくれたり、兄弟関係みたいなものが先輩、後輩の間でもある」

――色々なルールを知るのはこの時期。

「部活の練習が午後1時からと言って、30分くらい前に行って着替えなきゃいけないとか、そういうことや社会性が身に付いたりもする。特に日本の場合はチームとして動くことが多いので、協調性や社会性、他の人を思いやるとかっていうことは、部活動の中で身につけていると思うのです」

――青島さんも部活動で学んだ部分は大きいということですね?

「日本人の一番大事な部分、原型みたいなものは家庭、家族の中にから始まっているのですが、その先にある中学でやっと社会に出会い始めるという感じがしています。その人が生きていくための基本的な形が始まる。僕の場合は部活動での人間形成はすごく大きかった。中学野球で教えを受けたと思っています。部活動の中ではローカルなルールがあったりして、その中で自分をどうやったら、育てられるかを学ぶ場所でもあると思っています」

――古き良き部活動から、新しい時代の部活動への転換期とも言える。

「大げさに言うと中学の部活動が日本人を作っていると思うところもあります。それがこの地域移行に変化しようとしているから、これまでとは違う日本人が出来上がってくる可能性があります。それが良いものであればいいのですが、もしかするとそうでないケースも考えられます。今まですごくいいものが培われていても、違うものに変質してしまう可能性もある。それが部活動にとても興味を持って、取り組もうとしている最大の理由です」

――興味深いテーマですね。どのように変化し、新しいものが生まれるのか楽しみにしています。

「僕らは部活動で教わって、今の自分の原型ができたと思っています。その先には高校野球もあるのですが、これからの子たちが中学でせっかく部活動をやろうとして、そこに身を置いたとき、やっぱり学校のクラブって楽しいよねっていうふうに、今の状況を理解し、課題を解決しながら、新しい時代の部活の形を作ってあげないといけない。子どもたちにとってすごくいい時間が、もしかしたらちょっと今までよりも“勿体ない時間”になりかねないので、そこをすごく今の課題にしています」


青島健太(あおしま・けんた)

1958年4月7日、新潟・新潟市生まれ。埼玉・春日部高から慶大に進学。六大学野球で当時史上最多タイのシーズン6本塁打をマーク。社会人野球へ進み、東芝から1984年にドラフト外でヤクルトに入団。89年に引退後。スポーツライターやスポーツキャスターとして活躍。2006年にはセガサミー硬式野球部の初代監督に就任し、都市対抗初出場を果たした。19年には埼玉県知事選に無所属で出馬。落選したが2022年に日本維新の会から参院選比例代表で出馬し、当選を果たした。

関連記事