プロ野球選手も競馬やボートレース、競輪やオートレースに興じることは、もちろん許されている。
レベルの差はあれ、誰にでも射幸心はある。
自分のお金を使って身の丈にあったギャンブルをすることは、それぞれの人の趣味であり、息抜きであり、楽しみとして社会の中に合法的に用意されている。
全国の街々にあるパチンコもその種のものだ。
だからこれを咎めることはできない。
私も、テレビでキャスターの仕事をしている時は、ボートレース番組の司会をやっていたし、たくさんの選手(ボートレーサー)たちにインタビューをしてきた。競輪の番組にも出演したことがある。
しかし、オンラインカジノとなると話が違う。
いくら海外のカジノに賭けているとはいえ、日本では違法な 事になる。
スマートフォンで、しかも自分の自宅からでも気軽にできる。
やっている人は、誰にも迷惑をかけたり被害を与えたりしていないと思うだろうが、これは違法賭博なのだ。
警察庁が初めて実施した利用状況調査に基づく推計によると、経験者は約337万人、年間の賭け金は総額約1兆2423億円に上るらしい。
心配なのは若者への広がりだ。
年代別の利用状況では8.7%で20代が最も多く、10代の6割、20~30代の過半数が、オンラインカジノがきっかけで消費者金融や家族、友人知人に借金をした経験があるというのだ。
スマートフォンの手軽さと気軽さが、若年層を巻き込んでいるのだろう。
そして2月に発覚したのが、プロ野球オリックスの山岡泰輔投手のオンラインカジノ利用だった。
「山岡投手がオンラインカジノを使用している」との情報が寄せられ、山岡投手本人が認めたことから、オリックスは公表に踏み切った。
ここまで名前が公表されているのは、山岡投手だけだが、NPBが各球団に求めた調査の結果、3月20日までに自主申告したのは山岡投手を含めて8球団16人となり、こうした選手たちにNPBは総額1020万円の制裁金を科すと発表した。
プロ野球が開幕する時に、こんな原稿を書きたくなかったが、事ここに至っては、この問題をスルーするわけにはいかない。
NPBが下した処分に関しては、選手会も了承しているとの報道があるので、この是非をここで問うことはない。
ただ、これだけは声を大にして言わなければならない。
プロ野球選手(他のアスリートも同じ)は絶対にオンラインカジノに手を出してはならない。これが違法なのはもちろん、本人が想定しない事態に巻き込まれる可能性があるからだ。
オンラインカジノを理由にゆすられたり、脅されたり……。
そうなったときには、時すでに遅しだ。
また、気が付かないうちにギャンブル依存症になってしまうこともあり得る。
これは野球選手だけではない。
すべての若者に考えて欲しいことだ。
オンラインカジノをやってはいけない。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。