神宮球場と東京ドームを使って行われている全日本大学選手権。
公務の合間を縫って東京ドームの試合を観に行ってきた。
母校、慶應義塾大学は残念ながら出場していない(東京六大学は早稲田大学が出場)が、どうしても見たい大学があった。
気になる選手やプロ野球注目の選手をチェックしたかったわけではない。
こんな観戦スタイルも初めてだが、お目当てはある大学の野球部長だった。
野球部長がグラウンドに出てくるのは、一瞬しかない。
試合が始まる前の両校挨拶、それと試合終了後の挨拶の時だけだ。
選手は、ホームプレートを挟んで整列するが、野球部長はベンチの前で監督、コーチと一緒に並んで、一礼をするだけ。
その一瞬を見逃さないように、試合開始前から行って、その挨拶を見届けた。
大学名は伏せるが、その部長は経済学の教授で、縁あって野球部長も務めている。部長は、その大学の卒業生でもなく、選手として活躍した経歴を持つわけでもない。ただ、大の野球好きで野球部の部長を喜んで務めている。
審判がグラウンドに現れると、両校のナインがベンチ前に揃った。その後ろに監督、コーチと並んで野球部長も現れた。
審判がホームベースに駆けだすと、両校の選手たちも一斉にホームベースに向かった。主審が一声出して両校が挨拶をする。
しかし、その時、私が注目したのはベンチ前にいる野球部長だった。
横顔が似ている。
細い体型もそっくり。
しかもお世話になった先生と一緒で眼鏡をかけている。
私は、不思議な感銘を覚えた。
その野球部長は、私が小学生の時の恩師の息子さんだった。
恩師に呼ばれていった少年野球教室に彼も参加していた。
私が大学生だったころのことだ。
そこでどんな話をしたのか覚えていないが、彼は私のことを覚えていて、しばらくは野球選手に憧れて頑張っていたそうだ。
その後、学問に専念し大学で教授を務めるまでになった。そして、大好きな野球に今もかかわっている。
話はこれだけのことなのだが、少年野球で出会った少年が、大学の野球部長として野球と学生を支えてくれていることが嬉しくて……。
野球は選手だけでできるわけではない。
いろいろな人の活躍とサポートでその活動が成り立っている。
野球部長も、大事な役割だ。
残念ながらその大学は、1回戦で姿を消したが、またこの大会で彼の雄姿を見られるのを楽しみにしたいと思う。
令和の断面