■2025年10月23日にドラフト会議開催
10月23日、今年もNPB12球団によるドラフト会議が開催される。今年は創価大の立石正広選手というスラッガーに各球団が注目し、近年のメジャー流出を背景に主軸打者への需要が高まる中、どんな選手が指名されるのか、例年以上に関心が集まっている。
一方で、ドラフトという「入口」に注目が集まる時期と同じくして、戦力外通告という「出口」のニュースも流れる。選手名、所属年数、年齢を見ると、まだ人生の先は長い。だからこそ、セカンドキャリア形成を見据えた進路選択の重要性を、改めて考えたい。
複数球団のスカウトたちに、これまでもプロか進学かの適性について聞いたことがあるが、興味深い共通点が浮かび上がる。全員が口を揃えるのは、技術以上にメンタル、人間性、自己管理能力の重要性だ。
大学や社会人野球では、取り組みによって考える力が育つ。社会勉強を通じて人間として大きく成長し、身近な存在が力になる環境がある。引退後のキャリアを見据えれば、プロでいきなり大人の世界を経験するより、大学でさまざまな人と関わりながら成長してから野球界に入る方が、その後の人生に幅を持たせられる。
20年の取材経験から言えるのは、人間性の土台があってこその技術だということだ。この順序が逆になると、選手は伸び悩む。能力だけでここまで来た選手には、大学進学を勧めたい。一方、技術はそこそこでも、周囲の大人が人間性を評価できる選手こそ、プロ向きだと考える。
阪神・才木が示した「高卒成功」の条件
高卒でプロ入りし成功した好例が、阪神の才木浩人投手だ。高校時代はまだ幼さがあって当然の年齢だが、彼には自立心があり、何が自分に今必要かを理解していた。つまり「自分を持っていた」のだ。
その背景には、保護者や指導者など、頼れる大人が複数いたことが大きい。プロの厳しい世界で生き抜くには、技術や体力だけでなく、周囲に適切な助言者がいるかどうかが、成否を分ける要因になる。
興味深いのは、強豪高校の中には高校からのプロ入りを認めていない学校もあることだ。それは、18歳という年齢での判断の難しさ、そして大学での成長機会の価値を、指導者たちが理解しているからに他ならない。
「プロか進学か」―この問いに、絶対的な正解はない。どちらを選んでも正解になり得る。大切なのは、考えて考えて、そして一人で抱え込まず、責任を持った大人と一緒に判断することだ。
そして何より忘れてはならないのは、プロ野球生活は本当に短いということ。この現実を理解した上で決断してほしい。
選んだのならば、その道が正解だ。そこに向かって突き進めばいい。大切なのは、どの道を選ぶかではなく、選んだ道でどう生きるか。その覚悟こそが、選手を成長させると感じている。
知人のスカウトたちの話を聞くと、野球人生とは技術の習得だけでなく、人間としての成長の物語だということ。ドラフトという華やかな舞台の裏で、多くの選手と家族が真剣に向き合うこの選択。その重みを理解することが、次世代の野球界を支える第一歩になるはずだ。