客員教授を務める日本医療科学大学の学園祭(大樹祭)で今年もトークショーをやらせてもらった。
今年のゲストは、柔道で活躍した谷亮子氏。
谷さんとは30年来の付き合いになるが、今回は「柔道の極意」というテーマで改めて柔道の魅力を伺うことにした。
かつては取材者として五輪のたびに谷さんを追いかけていた。
五輪は92年バルセロナ大会から5大会連続の出場。バルセロナで銀メダル、96年アトランタでも銀メダル、2000年シドニーでは金メダル、04年のアテネでも金メダル、08年北京では銅メダルを獲得し、すべての大会でメダルを持ち帰っている。
加えて世界選手権では93年ハミルトン大会から7連覇、日本選手権も14連覇している。
女子48キロ級では、チャンピオン中のチャンピオンが谷さんだった。
高校時代から世界で活躍する谷さんは、旧姓の田村亮子時代から「ヤワラちゃん」の愛称で親しまれ、この日(6月29日)の学園祭にもたくさんのファンが詰めかけた。
柔道6段の谷さんに聞きたかったのは、あまりにも単純でストレートな質問だが、「なぜそんなに強かったのか?」ということだった。
話は、かなり専門的な柔道の世界、身体の使い方についての内容だったが、それは分かりやすいもので、観衆のみなさんも頷きながら話に聞き入った。
まず彼女の強さは、左右で同じように技をかけられることだという。
得意技の「背負い投げ」も当然相手が研究してくる。その研究の裏をかいて、普段とは違う背負いを仕掛ける。
他の投げ技も、左右どちらからでも繰り出すことができる。
だから相手に研究されても大丈夫だというのだ。
さらに言えば「得意技を持たない」ことだそうだ。一つの技に頼らない。状況に応じてどんな技でも攻めていく。これが連覇の極意だ。
また身体の使い方では、「円の理合(りあい)」という考え方を教えてくれた。
自分の身体を円(あるいは球)のように使うと縦横無尽に自由に動くことができる。おまけにケガをしない。そして相手を攻略する時は、相手選手の円の中に入ってしまう。つまり懐に飛び込んでしまう。そうすると相手の身体が伸びてしまって(円が崩れて)、投げやすくなる。
そうなると大きな力を使うことなく相手を投げ飛ばすことができる。
それが「柔よく剛を制す」の世界なのだ。
試合中は「八方の目(もく)」を働かせているとも言っていた。
これは、自分の周囲360度で起こっていることを感じられるくらい冷静に集中力を高めている感覚らしい。
その時には周囲の動きはもちろん、わずかな風や匂いも感じ取っているらしい。
つまりそこにあるのは、鍛えられた肉体と研ぎ澄まされた感覚。
それをもって谷亮子は、世界と戦い続けてきたのだ。
ヤワラちゃんとの1時間は、戦う人の内面に触れる珠玉の時間だった。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。