野球界で打者に与えられる勲章は3つある。
打率、本塁打、打点の三冠だ。
いまさらその説明は不要かもしれないが、それぞれの意味するところを書いておこう。
打率は、広くその打者のセンスの良さを表している。どんなコースのボールでもヒットにできる。苦手なコースがあっては首位打者は獲れない。バットコントロールの巧みさがあってヒットを量産できる。この分野の第一人者は、やはりイチロー選手だろう。
本塁打は、物理学の領域だ。どんなに鋭い当たりでも打球に角度が付かなければスタンドまで届かない。パワフルなバットスイングに加えて、放物線の描き方を知っているアーチストでなければタイトルは獲れない。世界の王貞治は、ホームランアーチストだ。
打点に関しては、首位打者にも適性があるし、本塁打王も自らのホームランで打点を稼ぐことができるのだから、最短距離にいる選手であることは間違いない。しかし、だからと言って本塁打王と打点王がつねにセットで獲得できるわけではない。
打点王には打点王の難しさがある。その能力は曰く言い難いが、月並みな言い方を選ぶとすれば「勝負強い」ということになるだろう。
塁上にランナーがいる時ほど、走者をホームに返すバッティングができる。
ただ、そうした打撃が得意な選手であっても、ここに大きな難題がある。
どんなに勝負強いバッターでも、自分で塁上に走者を置くことはできない。
だから打点王は、自分の前に並ぶ打者たちが出塁してくれないと獲れないタイトルなのだ。
今、シカゴカブスで打点王に突っ走っているのが鈴木誠也だ。今シーズンは着実に打点を稼ぎ、7月2日のガーディアンズ戦でも3打点をあげ、この時点で両リーグトップの「73打点」としている。
鈴木は自身の打点についてこう言っている。
「周りの選手がすごくて。打点はひとりで稼げるものじゃない。チームメイトに感謝している。積極的にいって、チャンスで(走者を)かえせているのは、すごくいいことなんじゃないかと思う」
もちろんすごい打者になれば、打点王も狙って獲るのかもしれないが、打点に関しては鈴木選手が言っていることに神髄があるのだと思う。
まずはその状況(走者がいる場面)で打席に立てることに感謝する。
そして、そこでは怯むことなく積極的な打撃を心掛ける。
ここで大きな当たりを狙いすぎないということも大事なのかもしれない。
犠飛でも内野ゴロ(ランナー3塁で相手守備が定位置の場合など)でも打点になる。
打点王は、もしかすると選ばれた人のタイトルなのかもしれない。
謙虚でつねにフォア・ザ・チームでプレーする選手へのお膳立て。
打点は、チームメイトからのプレゼントなのだ。
鈴木誠也のチームにおける存在とプレーぶりを見るとそんなことを思ってしまう。
まだ日本人で打点王のタイトル(メジャーの)を獲った選手はいない。
鈴木誠也に絶好のチャンスが来ている。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。