9月7日、本拠地甲子園球場で阪神タイガースが史上最速のリーグ優勝(126試合、78勝45敗3引分、勝率6割3分4厘)を決めた。この時点でセ・リーグ各チームは勝率5割を切り、阪神以外はすべて負け越している。その意味でもぶっちぎりの優勝と言えるだろう。
チームを率いたのは、就任1年目の藤川球児監督。
コーチ経験もなくいきなり指揮を執ることになった藤川監督には、「大丈夫か?」という不安の声もあったが、そんな懸念を見事に払拭する素晴らしい優勝だった。
藤川監督の采配に関しては、選手に気を配り、それぞれの力を十分に発揮させるマネジメントが光った。
選手を批判するようなことは一切言わない。
結果に関しては、「すべて自分の責任」と選手を伸び伸びとプレーさせた。
打撃陣では、不動の上位打線が見事に機能した。
1番近本
2番中野
3番森下
4番佐藤(輝)
5番大山
彼らには十分に休養を与えながら、盗塁と送りバントを絡めて堅実に攻め続けた。おかげで佐藤がセ・リーグ断トツのホームラン(36本)を量産し、打点においては佐藤、森下、大山が上位3傑に名を連ねた。
しかも接戦に強かったのは、ブルペンが抜群の安定感を見せたからだ。
なかでも中継ぎで圧倒的な結果を残したのは石井大智投手だ。
今シーズンは、48試合連続無失点の日本記録を更新中だ。
加えて阪神の連続イニング無失点記録は、藤川球児監督の47回2/3だが、石井投手はこれに迫る47イニング無失点で現在も継続中だ。
石井投手は、シーズン中に藤川監督からもらったアドバイスが、ずっと自身のピッチングを支えていると言う。
それは「勝とうと思うな」という一言だった。
勝ちパターンで送り込まれる中継ぎ投手は、自軍のリードを背負って投げることになる。そこには先発投手の勝ち星もかかっている。同点になるだけで、その勝ち星が吹き飛んでしまう。救援投手にはつねに重いプレッシャーがのしかかっている。
藤川監督は、抑え投手としてその重圧を背負い続けてきたのだ。
だから、その経験からのアドバイスが「勝とうと思うな」ということなのだ。
誰だって負けて良いと思って投げる投手はいない。
いつでも「勝とう」と思ってマウンドに上がる。
しかし、そこで何をすべきかと言えば「勝とう」と強く思うことではない。
勝つために何をすべきかを考えて、そこに全力を投入することだ。
その心持を石井投手は「凡事徹底」と表現する。
結果を考えても仕方がない。目の前のやるべきことに集中する。
その凡事の積み重ねが、勝利を連れてくる。
「勝とうと思うな」は、プレッシャーからの解放であり、それこそが勝利へのアプローチなのだ。
勝敗を離れて目の前のプレーに集中する姿勢が、投手陣だけでなくチーム全体に徹底されている。
そこに阪神躍進の理由がある。
シーズンはまだまだ続くが、藤川球児監督、見事な采配である。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。