令和の断面

vol.295 安青錦が変だ

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     大相撲の安青錦がおかしい。
    
     綱取りを目指して臨んだ今場所だが、序盤から黒星が先行し中日(8日目)を終えて3勝5敗。
     入門以来、4敗以上した場所はなく、ここまで一気に番付を駆け上がってきた。
     関脇となった九州場所で優勝。
     大関となった初場所でも優勝。
     そして迎えた今場所。
    
     ここまで二場所連続で優勝しているだけに、今場所で優勝すれば、あるいはたとえ優勝を逃したとしてもそれに準ずる成績を残せば横綱昇進は間違いないと思われた。ところが今場所はまったく精彩を欠いている。
    
     いったい何が起こったのか?
     師匠の安治川親方は「体調が悪いわけではない」と言い、どうやらケガや故障が原因ではないようだ。
    
     今場所の相撲を見ていて気になるのは、これまでのような攻撃的な姿勢が影を潜めていることだ。
     安青錦の特長は、以前このコラムでも書いたが、独特の立ち合いのスタイルにある。仕切りの時に股を割らずに陸上競技(短距離)のスタートのような姿勢から一気に前に出てくる。
     それは相撲と一緒に取り組んできたレスリングの影響なのだろう。
     頭を低くして鋭い出足でぶつかってくるので、この勢いをまともに受けてしまうとあっという間に押し込まれてしまう。またつねに頭を付けて戦うので、相手にまわしを許さず投げを食らうことも少ないのだ。
    
     先場所までは、このスタイルが見事に炸裂して快進撃を続けてきた。
     ところが今場所の安青錦は、早く上体が起きてしまい、これまでとは逆に相手の勢いを受け止めるような相撲を取っているのだ。
    
     この取り口の変化はどこからきているのだろうか。
     9日目に高安に勝って連敗を「3」で止めた安青錦は言った。
    
     「勝ち負けより、自分らしさを出そうと思った」
     そして
     「自分らしさを忘れないことを考えて、残りをしっかりやっていきたい」
    
     このコメントからわかることは、勝ち負けにこだわって自分らしい相撲を忘れていた部分があるということだ。
    
     優勝すれば横綱になれる。
     そのためには勝たなければならない。
     当然、考えるのは勝ち負けだ。
     しかし、勝ち負けを意識した途端、自分らしい相撲が取れなくなる。
     これが安青錦にとって、はじめてぶつかる壁なのかもしれない。
    
     敵は我にあり。
     今の安青錦の最大の敵は、自分自身。
        
     この試練を乗り越えた時、安青錦はさらに強くなることだろう。
    
    

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