【令和の断面】vol.13「憧れの職業」

令和の断面


「憧れの職業」– みんなスポーツを待っている –

先週、日本経済新聞でこんな記事を見つけた。
今春小学1年生になった子どもたちに聞いた「将来就きたい職業」のアンケート調査の結果だ。2日にクラレが発表した。
男女の10位までは以下の通りだ。

【男の子】

1位  スポーツ選手(18.8%)
2位  警察官
3位  運転士・運転手
4位  消防・レスキュー隊
5位  TV・アニメキャラクター
6位  研究者
7位  ケーキ屋・パン屋
8位  医師
9位  大工・職人
10位 ユーチューバー

【女の子】

1位 ケーキ屋・パン屋(26.0%)
2位 芸能人・歌手・モデル
3位 看護師
4位 花屋
5位 保育士
6位 アイスクリーム屋
7位 医師
8位 教員
9位 警察官
10位 美容師

これを見て「なるほど!」と納得する人もいれば、「令和だな!」と新しい時代の到来を感じる人もいるだろう。
男の子の「スポーツ選手」と女の子の「ケーキ屋・パン屋」の1位は、調査が始まった1999年から22年連続でトップを続けている。
また2016年に初登場したユーチューバー(当時は54位)が、今回はじめてベスト10に入った。

ここでさらに詳細を確認したいのは、男の子1位の「スポーツ選手」の内訳だ。

1位 サッカー選手(56.9%)
2位 野球選手(19.1%)

そして、今回はじめてラグビー選手が(4.0%)で仲間入りしている。

ラグビー選手の登場には、昨年、日本で開催されたラグビーW杯の盛り上がりが反映されているのではないかと記事は分析していた。

これを見て、私は、正直、ほっとする思いがした。
我々が子どもの頃には、ユーチューバーなる仕事などもちろんなかった。だから、こうした仕事に子どもたちが憧れを持っていることは、まさに「令和の断面」と言えるだろうが、安心したのは22年間もスポーツ選手が1位であることだ。
今回ラグビー選手が注目を集めていることは、昨今のラグビー人気によるところだろうが、いずれにしてもスポーツが子どもたちの心をとらえ続けている。

それはまちがいなく魅力的な選手たちの活躍があればこそのことだが、昔に比べてスポーツを観戦できる機会が増えていることも大きな理由としてあるだろう。
今は、サッカーや野球だけでなくいろいろなスポーツを「生」で、あるいはテレビやインタネットを通じて見ることができる。スポーツとメディアの良き関係が子どもたちの興味も引き付けているのだ。

ただ、それは去年までのことだ…。
今年になってからは、言うまでもないがスポーツの試合やイベントがことごとく中止や延期になっている。4月になった今でも、サッカーも野球も、その他のスポーツも、まったく行われていない。
子どもたちを魅了するスポーツを届けることができないのだ。
彼らもきっとつまらない思いをしていることだろう。
もちろん大人のスポーツファンも同じだ。

これは選手たちに届けたいメッセージだ。
みんなスポーツを待っている。そしてそのスポーツを見て、子どもたちはその選手に憧れる。選手たちもプレーができなくてつらいだろうが、22年間も小学1年生はスポーツ選手を1位にしているのだ。
だからその時が来るまで、しっかりと準備を整えておいて欲しい。新型コロナウイルス感染終息の向こう側に、たくさんの子どもたちが、スポーツの再開を待っているのだ。

青島 健太 Aoshima Kenta

昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。

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