【令和の断面】vol.24「今シーズンは、2番打者に注目だ」

令和の断面


「今シーズンは、2番打者に注目だ」

 日本の野球は、完全に変わりました!
 そう断言させてもらいます。
 2番打者最強説。
 もうつなぎ役の2番は、絶滅危惧種のようにどんどん姿を消しています。

 たとえば、6月28日(日)の各チームの2番打者を見てみよう。

【セ・リーグ】
巨人 丸
横浜 ソト
阪神 糸井
広島 菊地
中日 大島
ヤクルト 山田

【パ・リーグ】
西武 源田
ソフトバンク 柳田
楽天 鈴木
ロッテ 福田(光)
日ハム 大田
オリックス 安達

 広島の菊地や西武の源田は、送りバントの名手だが、判で押したようにバントをするわけではない。状況に応じて何でもできるところが彼らの持ち味だ。
 それ以外の選手は、打力を期待されての2番だ。
 巨人は、2番丸と3番坂本を相手投手によって入れ替えてくるし、横浜のソトや阪神の糸井、ソフトバンクの柳田やヤクルトの山田には、100%の確率で送りバントはない。
 日本の野球は、攻撃型のオーダーにすっかり変わってしまった。

 これにはメジャーリーグの影響ももちろんある。
 アストロズのアルトゥーベやエンゼルスのトラウトなど、メジャーリーグでは4番打者並みのバッターが2番にいる。
 日本で言えば、ソフトバンクの柳田や阪神の糸井、横浜のソトの配置がこれに似ている。

 2番に強打者を置く理論的根拠は、以下の通りだ。
 「0アウト、ランナー1塁」のケースで、送りバントで進塁させた時と自由に打たせた時に「1点」を取れる確率はほぼ同じなのに対して、打たせた時の方がビッグイニング(大量点)になる可能性が圧倒的に高いのだ。

 6月28日(金)のロッテ対オリックスのゲーム。
 1回表、オリックスの1番中川が四球で出塁すると、2番の安達が送りバントでランナーを2塁に進めた。
 このシーンを見たときに、私はなんだか嫌な予感がした。
 この後、4番のジョーンズにホームランが出てオリックスが2点を先制したのだが、もし安達に打たせていたら「もっとビッグイニングになっていたかもしれない…」
 立ち上がりから制球が定まらなかったロッテ先発の石川には、送りバントで1アウトが取れたことで楽になる部分があったのではないか。
 ジョーンズにホームランを打たれたものの、2点で済んだのは石川にすれば最少失点に近いものだっただろう。
 結局この試合は、7回まで5対2とオリックスがリードしながらも、ロッテが8回裏に4点を取って6対5で勝った。
 そして、土曜日も日曜日もロッテが勝って、オリックスに6連勝(合計8連勝)を飾ったのだ。

 これは、結果論だ。
 もちろん送りバントをしても勝つゲームは勝つ。
 しかし、DH制を採用するパ・リーグは、最初から打ち合いの設定になっている。
 1点や2点は、すぐにひっくり返される覚悟で打ち合いに臨まないと、相手はどんどん打ってくる。

 2番に強打者を置くのは「打ち合い上等」と相手を威嚇する意味もある。
 今シーズンは120試合の短期決戦。
 しかも連戦に継ぐ連戦が待っている。
 勢いに乗ったチームが、そのまま突っ走る可能性が高い。

 では、誰が勢いをつけるのか。
 それは、超攻撃的な2番打者。
 それが私の予想だ。
 2番打者の活躍が、チーム浮沈のカギになる。
 2番を見れば、そのチームの野球が見えてくる。
 今シーズンは、2番打者に注目だ。

青島 健太 Aoshima Kenta

昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。

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