【令和の断面】vol.111「歴史的な大転換 今シーズンから野球が大きく変わる」

令和の断面


「歴史的な大転換 今シーズンから野球が大きく変わる」

 日本のプロ野球に続いてアメリカでもメジャーリーグが開幕する。野球ファンにとっては、いよいよ球春到来である。
 今シーズンも注目は、もちろん大谷翔平に集まるだろうが、気になるルール改正があったので、今回はそれに触れておこう。

 まずは、大谷に関わる「VIP待遇」の改正だ。
 もうすでにこれは「大谷ルール」と呼ばれている。
 これまで大谷のような二刀流の選手の起用には、難しい面が付きまとっていた。
 もし先発で投げて「DH」で打者として出場しても、マウンドを降りると「DH」ができなくなっていたのだ。それを避けるためには、「DH」を放棄して「2番ピッチャー大谷」のようにして出場する必要があった。ただこれもマウンドを降りた後、そのまま打席に立ち続けるためには、どこかのポジションを守る必要がある。大谷の起用には、他の選手をいろいろと巻き込むことになっていたのだ。

 それが一気に解決したのが、今回の「大谷ルール」である。
 つまり「投手」と「DH」で出場し、マウンドを降りてもそのまま「DH」で打席に立ち続けることができるようになったのだ。
 これがなぜ「VIP待遇」かと言えば、現状、このルールの適応を受けるのは、大谷しかいないのだ。
 これは大谷をより出場させるためのルール(?)
 「マウンドを降りても、彼の打席が見られる!」
 メジャーリーグ側の配慮とも取れるルール(?)

 つまり「アメリカ中が彼のプレーを見たがっている」ということなのだ。

 そしてもうひとつ、これまた歴史的な大改革が今シーズンから敢行されることになった。これまで「DH制」を導入していなかったナショナルリーグが、アメリカンリーグ同様に「DH制」で戦うことになったのだ。
 これはきっと野球界の大転換になることだろう。
 日本のプロ野球も、セ・リーグは「DH制」の導入を見送ってきたが、アメリカ(ナショナルリーグ)のこの決断は、遅かれ早かれセ・リーグへの導入を迫ることになるだろう。
 そうなれば、日米のプロリーグがすべて「DH制」の野球になる。
 つまり野球そのものが「DH制」でやるもの!という認識が、世界的に定着することになるのだ。

 これはきっと、日本の少年野球から草野球に至るまでのすべての野球に影響することになるだろう。
 近い将来、甲子園の高校野球も「DH制」になることが予想される。

 野球ファンの間でも、「DH制」には好き嫌いがあるだろうが、メリットをあげれば、少年野球でも試合に出場できる選手がひとり増えるということだろう。守るのは苦手だけど、打つことには長けている。そんな選手にも出場の機会がまわってくる。投手の打力を活かしたいときには「大谷ルール」を適用すればいい。
 「DH制」の導入は、大谷のような二刀流がやりやすくなる環境をつくる。
 その意味では、第2、第3の大谷が現れることにもつながるだろう。

 「大谷ルール」と「ナショナルリーグのDH制導入」
 このルール改正が、これからの野球を大きく変えることになるだろう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
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