【令和の断面】vol.116「女子クリケット宮地静香選手の活躍」

令和の断面


「女子クリケット宮地静香選手の活躍」

 男女を通じて日本人初のプロ・クリケット選手、宮地静香選手が中東・ドバイで躍動。日本ではほとんど報じられていないが、ドバイで女子プロリーグ
 「SDG FairBreak Invitational 2022」が開催された。

 このリーグは、オーストラリアの団体が世界各国から90人ほどのトップ選手を募って、6チームに振り分けて戦う短期間の大会だが、召集される選手とはプロ契約を結び、渡航費、滞在費はもちろん試合給も支給される。
 その招待が、去年10月、宮地選手の下に舞い込んだのだ。

 身長152センチの彼女は、世界のトップ選手の中にあっては、圧倒的に小柄な選手だ。しかも40歳という年齢は、本人曰く「まちがいなく今回の選手の中では最年長だと思います」
 しかし、運動能力抜群の彼女は、長く日本代表でプレーしその実力と貢献が認められて、日本人初となるプロ契約を結ぶことになった。

 この機会を待ち望んでいた宮地選手は、臆することなく世界の強豪選手と一緒に戦い、7日に行われた試合では大活躍を見せた。

 Spritに所属する宮地選手は、Dubai International Stadiumで行われたFalcons戦に出場し、27ラン(得点)差での勝利に貢献した。
 先攻のSpritは、イングランド代表選手の活躍もあって147ランを獲得する。
 後攻のFalconsは、スリランカ代表選手(42ラン)などの活躍で逆転を狙ったが、宮地選手が4つのアウトを奪い、Falconsを120ランに抑え勝利する。1試合で4つの奪アウト数は、試合終了時点で今大会最高記録となった。
 宮地選手は、この試合の「Player of the Match」に選ばれた。

 英語でのインタビューに応じた宮地選手は「とにかくうれしい。でも今日はやるべきことに集中していただけです」と喜びを語った。

 クリケットは、まだまだ日本での普及が進んでいないが、世界的には大変な人気スポーツだ。競技人口は、サッカーに次いで世界第2位といわれている。英国が発祥でオーストラリアやニュージーランド、南アフリカ、インド、スリランカ、パキスタンなどが強豪として君臨している。
 各国にはプロリーグもあり、特にインドでは熱狂的な支持を得ている。男子のスター選手の中には、年俸20億円を超える選手もいる。アメリカの大リーグ並みのビジネススケールだ。ルールも野球に似て各チーム(11人)が、攻守に別れてプレーする。オーバル(楕円形)の中心でバッティングを行い、野球でいうホームランは、一挙に6点が入る。バッターは360度どの方向に打ってもよいことと、アウトになるまでいつまでも打ち続けるところが野球との違いだ。

 女性の活躍、ジェンダー平等、多様性、国際交流が強く謳われた東京オリンピック・パラリンピック。今回の宮地選手の活躍も、そうした流れをより一層推進するものだ。そして彼女の挑戦がこれからの日本クリケット界にも大きな励みになることだろう。
 長い間、海外でプロ選手として活躍することを目指していた宮地選手にとっても、
今回の活躍がまた新しい扉を開くことになるかもしれない。

 多彩な変化球を投げるスローピッチの宮地選手だが、そのメッセージは世界中にストレートに発信された。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
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