【令和の断面】vol.119「中学部活動の地域移行について」

令和の断面


「中学部活動の地域移行について」

 中学校の部活動が大きく変わる。
 期待する面も大いにあるが、心配や懸念も募る改革だ。

 これまで中学の部活動は、学校の先生が指導に当たっていたが、来年以降は週末の活動を地域のスポーツクラブ等に地域移行していくことになりそうだ。

 スポーツ庁の有識者会議は、公立中学校の運動部活動の指導を地域のスポーツクラブなどに委託していく提言をまとめ、スポーツ庁に提出した。
 今後、提言をもとに部活動の地域移行が具体的に進められる。

 来年から3年間かけて、休日の部活動を地域のスポーツクラブなどに委託していく。「休日」の地域移行が進めば、その後、「平日」も移行していく方針だという。

 当初は、週末だけの移行だと聞いていたが、「平日も…」となると、中学の部活動そのものが大きく変わることになる。
 この改革の根底にあるのは、指導する先生方の負担軽減だ。
 多くの人は、中学時代何らかの部活動(文化部も含めて)をやっていたと思うが、その多くは休日返上で指導に当たってくれた先生方の貢献で成り立っていた。
 その負担があまりにも大きいので、週末だけは外部で活動する。
 これは先生方の働き方改革の一環だったのだ。
 それがすべての部活動を外部委託するということになれば、これまでにない心配事が浮上してくる。

 それは部活動をするのに保護者に経済的な負担をお願いすることになる点だ。
 これはある意味では、受益者負担という観点から当たり前のことと言えるかもしれないが、せっかく義務教育の中で部活動も自由にできたのに、これからは会費や指導料のようなものを払わなければいけないことになる。

 良い面を考えれば、その競技をやったことのない先生が顧問として指導するようなことはなくなり、生徒たちにとってはより専門性の高い指導を受けられることになる。
 その一方で懸念されることは、部活動も塾に行ったり家庭教師に勉強を習ったりするように、その家庭の経済状況によって左右されることになる。
 つまり家の経済状況で部活動ができなくなる生徒が生まれる心配があるのだ。

 始まろうとしている変化は、きっと多くの問題点を解決することになるのだろうが(先生の働き方、指導内容の向上、生徒たちのレベルアップ等々)、この改革が経済的に困窮する家庭の子どもたちを置き去りにするようなことになるのなら、子どもたちの部活動を奪ってしまうことになる。

 このあたりのケアをどうするか?
 そこもしっかりと検討して、すべての生徒たちに部活動の機会を作ってあげて欲しい…と思う。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
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