【令和の断面】vol.121「貯筋の時代」

令和の断面


「貯筋の時代」

本コラム「令和の断面」で紹介した、あるいは取り上げてきたアスリートや偉業は、概ね若い世代が中心だった。
例えば東京五輪で活躍したスケートボードの選手たちは10代前半だったし、北京五輪で世界中をアッと言わせたスノーボード平野歩夢選手なども20代前半。
今年のプロ野球を序盤から盛り上げている千葉ロッテの佐々木朗希投手も、まだ二十歳(はたち)になったばかりだ。

こうした若い世代の躍動は、まさに令和の断面を象徴する出来事だと思うが、その一方で、ひと昔前では考えられないベテランたちが、「まだまだやれる」と暴れているのもこの時代の特徴といえるだろう。

50代で現役を続けるサッカーの三浦知良選手(55歳)などはその代表格だが、プロ野球でも40代の選手(ソフトバンク和田、阪神糸井、ヤクルト石川、青木等々)が頑張っている。

年齢に縛られない。
引退の美学(衰える前に辞める)の消失?
トレーニングでいつまでも若さを保つ。
年齢と戦うことにも意味がある。

令和の今、こうした価値観がベテランと呼ばれる世代を支えているのかもしれない。これもまたこの時代が育むスポーツ文化なのだ。

先日、歌手で俳優の中条きよし氏と選挙関係のイベント(@大宮駅)でご一緒した。「うそ」のヒット曲や「必殺仕事人」シリーズに出演していた、あの中条きよしさんである。
驚いたのは、その体格と姿勢の良さだ。
年齢を言っては申し訳ないが、76歳である。
十分な筋肉を称え、まだまだ若々しさ全開。
学生時代にはサッカーをやっていたとおっしゃっていたが、その後のトレーニングも怠っていないのだろう。肩回りの筋肉も隆々としている。ゴルフがお得意だと聞いたが、それも頷ける体つきだ。

お金を貯めるのが「貯金」ならば、筋肉を貯めるのが「貯筋」。
この「貯筋」運動の提唱者(福永哲夫氏)とは、福永先生が学長を務めていた鹿屋体育大学でご一緒した。
中条さんの豊富な筋肉を見てすぐにイメージしたのは、まさに「貯筋」の成果だった。筋肉があるから若くいられる。

64歳の青島。
中条さんは、ちょうど一回り違う、同じ戌年だ。
ああいう70代になりたい。
そのイメージをもらった有難い出会いだった。

スポーツ界で進む若年層の活躍。
その一方でベテランたちもその座をなかなか譲ろうとしない。
このせめぎ合いが続けば、令和のスポーツ界はもっともっと鮮やかな断面になっていくだろう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
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