【令和の断面】vol.134「ドイツに勝った?負けた?」

令和の断面


「ドイツに勝った?負けた?」

 サッカーW杯「日本対ドイツ戦」の前(22日)にこの原稿を書いている。
 そしてこれを読んでいただくのが、試合が終わってからのことだ。
 さて、日本代表は勝っているのか?負けているのか?
 日本が勝つ想定で思い切りよく「祝辞」を書いてみたいが、その可能性は50パーセント以下だろう。4回やって1回勝つなら、勝率25パーセントだ。どう楽観的に見てもそのくらいが妥当なところか?
 冷静に考えるならもっと低いというのが世界の評価かもしれない。

 試合前にこんなお誘いがあった。
 ドイツ大使館からパブリックビューイングに来ないか?と、私たち日本の国会議員にも声が掛かったのだ。他にもいろいろな分野の方々が招かれたのだろうが、そのお誘いを聞いてすぐにピンときた。

 彼らは「日本に負けるとまったく思っていないな(笑)」

 勝つ気満々。余裕で勝つと思っているので日本の関係者を招待できる(笑)。
 悔しいけれど、我々がドイツの人を誘って一緒に観戦できるか?と考えると、とてもじゃないが安心して観戦できない(笑)。

 ただ、このパブリックビューイングのお誘いには、もうひとつ理由があるように感じた。それはブンデスリーガ(ドイツ・プロリーグ)で数多くの日本人選手が活躍しているからだろう。
 先日、在ドイツ日本国大使館の柳秀直特命全権大使にお話を聞く機会があった。
 柳大使は、サッカーがお好きで、かなりの試合を観戦しておられるとのこと。
 そこでサッカーに関する質問をさせてもらった。

 Qなぜ日本の選手はブンデスリーガにフィットするのか?
 Qそうした日本人選手をドイツの人たちはどう見ているのか?

 柳大使の見解は明快だった。
 ドイツ人は、日本人同様に規律や組織を大事にする。組織的なサッカーをするドイツのチームに協調を重視する日本人はよく馴染む。そこが多くの日本人選手がドイツで活躍している理由ではないか。また、そうした日本人選手をドイツのファンも十分に評価している。長くドイツでプレーしている長谷部誠(Eフランクフルト)は、非常に高く評価されているし、デュアルに滅法強い遠藤航(シュツットガルト)は、もうすでに「レジェンド」扱いされているそうだ。そして、今もっとも注目の選手として柳大使が挙げたのが、Eフランクフルトの得点源、鎌田大地だった。

 この他、日本代表のキャプテン吉田麻也も、今はシャルケでプレーしている。浅野拓磨はボーフム、田中碧もデュッセルドルフで存在感を出している。
 つまりドイツで活躍するこれだけの日本人選手が登場するのだから、日本対ドイツ戦は、「ドイツ対ドイツになじみのある選手」の試合でもあるのだ。

 さて、これだけ多くの選手がドイツでプレーしているので、相手を必要以上に恐れることはないだろう。世界的なGK(ゴールキーパー)、ドイツのキャプテンでもあるマヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン)が警戒する選手として鎌田の名前を挙げたくらいだから、ドイツも日本を研究しているはずだ。

 引き分けなら御の字だが、もし負けたとしてもコスタリカ戦が最大の肝だ。コスタリカに勝てば、決勝トーナメント進出の可能性が残る。

 結局パブリックビューイングには行かず、自宅での観戦を決め込んだ。
 鎌田と遠藤の2ゴール!2対1で勝つといいんだけどな。
 果たしてどんな結果が待っているのか?
 やっぱり1対1の引き分けを期待しよう。
 弱気だな…(笑)

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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