【令和の断面】vol.140「ヌートバーが鍵を握る」

令和の断面


「ヌートバーが鍵を握る」

 いま「ラース・ヌートバー」という名前を知っていればかなりの野球通といえるだろう。この選手は、大リーグ、カージナルスでプレーするバリバリのメジャーリーガーだ。
 ・身長190センチ、体重95キロ
 ・外野手(右投げ左打ち)
 ・年齢25歳
 ・父親はアメリカ人、母親が日本人の日系2世

 なぜこの選手が注目を集めているかと言えば、3月に始まるWBCの日本代表に内定したからだ。これはルール的に問題ない。両親の国籍や出生証明があれば、WBCはどこの国の代表にもなれる。

 きっかけは大谷翔平の通訳を務める水原一平氏にあったようだ。インスタグラムのダイレクトメッセージで「日本代表入りに興味がありますか?」と尋ねると、即答で「ある」と返信が来たそうだ。
 そこで栗山英樹監督が動き出す。
 ヌートバー本人とオンラインで話し合い、内定を決めたという。

 ヌートバーの昨シーズンの成績は、108試合に出場し、打率2割2分8厘、14本塁打、40打点、4盗塁。
 代表に召集するには、十分な成績と言えるだろう。

 加えて栗山監督は、ヌートバー合流のもうひとつの意義を語った。

 「世界がグローバル化していく。みんなで手を取り合って仲良くできるために、いろいろなところで野球をやっている人たちが(代表に)集まることに、すごく意味がある」

 今回のWBCには、大物プレーヤーの代表入りが予定されている。
 大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(レッドソックス)らのメジャー組に加えて、国内組もスター選手がフル参戦する。
 これもすべて日本ハムで長く監督を務めた栗山監督だからこそ揃ったメンバーだが、正直、うまくいきすぎていて何かが足りないと思っていた。

 これだけの選手が集まってしまうと、「誰かがやってくれるだろう」という安心感というか、お互いに依存してしまう雰囲気が生まれやしないか?
 メンバーの充実は決して悪いことではないのだが、スター選手揃いのチームにスパイス(刺激)が必要だと感じていたのだ。

 それがヌートバーの加入で、見事に解消された気がする。
 ヌートバーは早速こんなコメントを発している。

 「国のためにプレーする。3月に激しく、高いレベルで野球をして神経系にショックを与えるんだ。あんな雰囲気の中で戦うことは本当にエキサイティング。待ちきれない」

 彼の高いモチベーションが、日本チームに大きな刺激と競争を与えてくれるだろう。絶対に勝たなければいけないという侍ジャパン独特の使命感を良い意味で和らげてくれる効果も期待される。

 「ヌートバー」
 3月にこの名前が躍る時、日本代表は躍進を遂げているだろう。
 どちらにしてヌートバーがWBCの鍵を握っている。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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