【令和の断面】vol.168「甲子園に屋根を架ける」

令和の断面


「甲子園に屋根を架ける」

 夏の甲子園に4年ぶりの光景が戻ってきた。
 コロナ禍の感染予防対策として全員揃っての入場行進(開会式)が中止されていたが、今回の105回大会から復活した。前年優勝校の仙台育英を先頭に、北から順に参加49校が甲子園を行進した。
 これも暑さ対策の一環だったのだろうが、主催者や来賓の挨拶が短かったのもスピード感があって良かったと思う。

 ここ数年は、コロナに対する感染予防対策に主眼が置かれていたが、今回からはコロナに配慮しながら、暑さ対策にも万全を期すことになった。

 変更点は以下の通りだ。

 まずは、ベンチ入りの人数が2人増えて、20人が登録されることになった。
 暑さ対策でさまざまな準備も必要になる。水分や氷を用意する。タオルや着替えを用意する。その分人員が必要になる。また、体調不要を訴える選手が出た時に代わりの選手も必要になる。そうしたことも想定してベンチ入りメンバーが2人増えたのだ。
 これは暑さ対策だけでなく、これまでより多くの選手が甲子園でプレーできることになり、教育的な観点からも評価すべきことだろう。

 もうひとつの変更は、5回が終わったところで設けられるクーリングタイム(10分間)だ。ダッグアウトの裏に作られたクーリングルームで選手たちは涼を取り、身体を冷やし水分を十分に補給したりする。
 サッカーやラグビーにはハーフタイムがあって、一旦ロッカールームに帰って休むことができるが、野球にはそうした発想がなかった。このクーリングタイムには身体を冷やすことに一義的な目的があるが、劣勢のチームにとっては、作戦を立て直したり精神的な切り替えのタイミングになったりして、流れが変わるきっかけになることもあるだろう。その意味では、野球にとって新しい要素が生まれたと言えるだろう。

 上記2点は、単なる暑さ対策だけにとどまらず、これまでの高校野球をさらに面白くする要素にもなって、選手にとっても観客にとっても歓迎すべき変更だと思う。

 しかしここ数年の暑さは、尋常ではない。気温も35度を平気で超える。この時期に外で野球をするには過酷過ぎる環境になってきている。
 もしかすると、今後もさらなる暑さ対策が必要になるかもしれない。

 当方の考えを挙げれば以下の通りだ。
 ・時間の変更(猛暑の日中は避け、早朝とナイトゲームで開催する)
 ・イニングの短縮(9回を7回にする)
 ・場所の変更(涼しい地域かドーム球場で開催する)
 ・夏から秋に開催時期の変更

 これはプレーする選手だけでなく応援する人たちも考慮してのことだ。
 時間の変更は、甲子園をベースにしてのことなので、反対意見は少ないかもしれないが、その他の変更は認めないファンが多いだろう。しかし、このままの暑さが続いていくとしたら、場所を含めた大改革が必要になるだろう。

 甲子園がドーム球場(あるいは開閉式の屋根を架ける)になれば、すべて解決するのだが、果たしてそんな日が来るのか?

 今回の大会から、負けたチームが甲子園の土を持ち帰ることも許されるようになった。甲子園への愛着には、計り知れないものがある。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
バックナンバーはこちら >>

関連記事