【令和の断面】vol.172「新時代の日本代表」

令和の断面


「新時代の日本代表」

 スポーツの秋というには、まだまだ暑い日が続いているが、このところ楽しみなゲームが続いている。

 まずは男子のバスケットボール。
 沖縄で行われたW杯は、大いに盛り上がった。
 初戦で格上の(優勝した)ドイツ(63対81)には競り負けたものの、次戦のフィンランド(98対88)に歴史的な逆転勝ち。今までは、ヨーロッパ勢にまったく勝てなかった日本。この勝利で一気に流れが変わった。その後、これまた優勝候補のオーストラリア(89対109)に敗れたもののチーム力は確実に高まっていた。
 順位決定戦に回った日本だったが、ベネズエラ(86対77)に快勝、カーボベルデ(80対71)も退けて自力でパリ五輪出場を決めた。

 続いてはフランスで開幕したラグビーのW杯。
 前回2019年、第9回大会は日本開催。
 日本代表は初戦のロシアを30対10、アイルランドを19対12、サモアを38対19、スコットランドを28対21で下し、破竹の4連勝で初のベスト8入りを果たした。 準々決勝の南アフリカ戦は3対26で敗れたが、日本中がラグビーに熱狂した。
 前回同様、今回もジェイミー・ジョセフHD(ヘッドコーチ)率いる日本代表は、初戦(9月10日)のチリ(42対12)に勝って好発進。次戦は17日に強豪イングランドと対戦する。

 バスケットやラグビーが行われている間にも、サッカー日本代表がドイツと親善試合を行い4対1で大勝したり、野球のU18が台湾で行われているW杯で優勝したり、大相撲の秋場所が開幕したりしている。
 さらに挙げれば、プロ野球オリックスの山本由伸がノーヒットノーラン(9日ロッテ戦)を達成、陸上の北口榛花(やり投げ)や田中希実(5000m)も日本記録を更新している。

 日本勢の快勝が続き、さまざまな記録が樹立される中で考えさせられることは、人的にも環境的にも日本スポーツ界の国際化が進んでいることだ。
 おそらくこれが「令和の断面」であり、快進撃の理由ともいえるだろう。

 バスケットでチームを牽引した渡辺雄太は、アメリカNBA(フェニックス・サンズ)の現役選手だ。3ポイントシュートでチームに勢いをつけた富永啓生はNCAAネブラスカ大でプレーしている。ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)は、長く日本で活躍するアメリカ出身の選手だ。
 ラグビーの国際性は、もう言うに及ばないだろう。ニュージーランド出身のリーチ・マイケル(東芝)は、もはや日本ラグビーの顔であり、この他オーストラリア、トンガ、南アフリカ、韓国など、日本代表の約半数が海外出身の選手たちだ。
 サッカーの日本代表も、いまやほとんどの選手がヨーロッパでプレーし、代表に召集されると各国から集まってくる。
 ついでに言えば大相撲にも外国出身の力士がたくさんいる。

 バスケットやラグビーが象徴するように、こうした交際性あふれるチームを指揮するのもトム・ホーバスHDやジェイミー・ジョセフHDと言った外国人指導者だ。

 国際性は同時に多様性を意味している。
 さまざまな国の選手が、それぞれのバックグラウンドを活かして日本代表として多様性のあるチームを構成する。その多様な個性がチーム内の競争を促し、重層的なチーム力を生み出している。

 これが近年の日本代表の強化につながり、新時代の日本代表を創り出しているのだ。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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