【令和の断面】vol.175「落花生の収穫」

令和の断面


「落花生の収穫」

 千葉県八街市にある千葉黎明高校が創立100周年を迎え、その記念式典と祝宴に出席した。黎明高校の理事長が、慶應義塾大学、東芝の先輩であり、昔からお世話になってきた縁もあり、記念すべき会に参加させていただいた。
 元々は農業高校としてスタートした同校。いまも「生産システム科」として農業系の勉強も選択でき、学内には校舎や体育館、各種スポーツグラウンドに加えて畑やビニールハウスも広々と構えている。学校の各所には、生徒たちが栽培した草花が飾られ、季節感に溢れている。

 そんな中、始まった記念式典。
 校長、理事長に続いて挨拶した生徒会長のスピーチが印象に残った。
 いや、それは素晴らしかった。

 彼女は、挨拶をこう切り出したのだ。

 「落花生の収穫の季節がやってきました……」

 私は、冒頭のこの一文で、忘れかけていた大切な何かに気が付かされた。

 ひと昔前なら、わざわざこんな挨拶をしなくても生徒も地域の人たちも誰もが分かっている当たり前のことなのかもしれない。 しかし、東京から来た私は、今(秋)が、落花生の収穫期だと言うことをまったく知らなかった。

 この生徒会長の冒頭の挨拶を聞いただけで、人生で一番大事なことは何か?を教えてもらった気がした。

 「私たちは、なぜスポーツをするのか?」という大きな問いに対する答えも、きっとそれは「季節の移り変わりを知るため」だと、言えるのだろう。

 「球春到来」という言葉がある。
 野球の始まりが、温かい春の到来を教えてくれる。
 「大谷翔平ホームラン王獲得」は彼の偉大さと共に、秋(シーズン終了)の到来を知るための出来事だ。

 スポーツは、本来、季節の中で、その季節を知るためにある。
水泳やヨット、スキーやスケートなどは、その一番の例だ。
ラグビーやアメリカンフットボールは、冬の到来を告げるスポーツだ。
 スポーツは季節と一緒の巡り、人はスポーツをすることで季節の到来を知るのだ。

 ではなぜ季節の到来を知ることが大事かと言えば、それは私たちが忘れがちになる「人は地球に暮らしている」ということを教えてくれるからだ。

 そのことを思えば、私たちは、地球にも、環境にも、人にも、草木にも優しくなれるはずだ。

 生徒会長の一言は、そのことへのメッセージだったのだ。
 だから、ハッとさせられた。
 そう、「スポーツの秋」は季節を感じるためにスポーツに興じるのだ。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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