【令和の断面】vol.186「2チーム増のプロ野球改革」

令和の断面

 来年、2024年からプロ野球が大きく変わる。
 これまで12球団で運営されてきた2軍(ファーム)の試合が、2チーム増えて14球団で行われることになる。

 まず、現状を確認しよう。
 今、ファームは、イースタンリーグが7チーム(巨人、ヤクルト、横浜、西武、日本ハム、ロッテ、楽天)で行われ、ウエスタンリーグは5チーム(阪神、中日、オリックス、広島、ソフトバンク)で戦っている。問題は、ともにチーム数が奇数で、カードを組むと必ず1チームが余ってしまうことだ。そこに今回2チームが加わってイースタンが8チーム、ウエスタンが6チームになる。

 新規に参入するチームは、静岡市清水区にある清水庵原球場を本拠地とする「ハヤテ223(ふじさん)」と、これまで独立リーグBCリーグで戦ってきた新潟市を本拠地とする「アルビレックス新潟BC(ベースボールクラブ)」だ。

 「ハヤテ223」は、東京で金融業やベンチャー企業への投資事業などを手がける「ハヤテグル-プ」が親会社で、今回初めて球団を経営することになる。
監督には、近鉄で投手として活躍した静岡出身の赤堀元之さん、代表付きGMには元横浜監督でもある地元清水出身の山下大輔さんが就任した。
 選手は、来春3月までに集めることになる。

 この試みは、単にチーム数が偶数になるだけでなく、これからのプロ野球にとって大きな可能性を秘めている。

 まずは、これまでプロの野球があまり見られなかった地域で試合が開催されることだ。2軍とは言え、レベルの高い選手たちが躍動する。静岡や新潟の地域活性化にも寄与するはずだ。同時に新たな野球ファンの拡大にもつなげたい。

 また選手側からの視点で言えば、学生や社会人の選手にとって野球をする場が広がることになる。ここでの活躍が認められれば、ドラフトの対象選手になる。(元プロ野球の選手は、シーズン中でも12球団に移籍することができる)

 そして将来的に最も注目されるのは、こうした2軍の球団増が1軍のエクスパンション(球団数拡大)につながることだ。

 プロ野球は、1958年のシーズンから現在と同じセ・パ6球団ずつの12球団で戦っている。その後、60年以上、買収などによって親会社が変わることがあっても、今回のように外部から新たな球団が加わることはなかった。
 ちなみにアメリカの大リーグは、1960年代の16球団から現在の30球団までエクスパンションでチームを増やし発展を遂げてきた。

 日本のプロ野球もその可能性を探るべきだと考えるが、NPB(日本プロ野球機構)の現状は、エクスパンションについて極めて消極的だ。

 しかし、60年ぶりに2軍のチームが増えたことは、これからに向けて大きな一歩と言えるだろう。
この試みが「実装実験」となって、マーケットがさらに広がるというデータや分析が出てくれば、1軍改革にもつながっていくことだろう。

 そのためにも、この「2チーム増」の改革を何としても軌道に乗せてもらいたいと思う。
 そうでなければ、日本の野球界はどんどん収縮していくことになるだろう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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