【令和の断面】vol.197「女子野球「10 Carat Express」」

令和の断面

 四国高知市に港湾関係の視察に行った際、以前から気になっていた女子野球チームの練習を観に行った。
 チームの名前は「10 Carat Express (10カラット エクスプレス)」

 訪ねたのは土曜日の午後。
 この日は市内の高校のグラウンドを借りて練習していた。

 バッティング練習の最中にお邪魔したが、女子の選手は6名、練習に参加していた男子中学生が1名、合計7人がキビキビと動いていた。

 監督を務める村上祐基さんとコーチの國信貴裕さんは、共に四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスで活躍していた元選手。
 このふたりが打撃練習のピッチャーを務めて、かなり速い球を投げているのだが、これを各選手が見事に打ち返していた。

 ピッチャーを國信コーチに代わった村上監督がベンチに戻ってきたので話を聞いた。

 監督の第一声は「女子でもみんなうまいんですよ」
 当方もまったく同感だった。
 シャープな打球が次々と外野に飛んでいく。
 また、二塁とショートを守って打球の処理をしている二人は、見事なグラブさばきでダブルプレーの練習をしている。

 村上監督が続ける。
 「今日も仕事や学校があって練習に来れない選手もいるんですが、みんな厳しい環境の中でも頑張っています」

 10カラットエクスプレスは、地元の企業数社から支援を受けて活動しているが、
観客収入やグッズ販売などで収益をあげることがまだできていない。

 これは女子野球界全体の悩みだが、高校、大学、社会人と野球を続けたい女子選手は多いのだが、受け入れ先となるチームが少ないのだ。
 これまで女子のプロリーグなども各地で立ち上がっているが、経済的な採算が取れず、どこも長く続いていない。

 どうすればいいのか?
 手本にすべきは、やはりサッカーだろう。
 Jリーグの各クラブは、傘下にジュニアチームと女子チームを持っている。
 野球にもこうした体制があれば、女子の参入はもっと増えるはずだ。
 そして、新しい魅力を掘り起こすこともできる。
 最近、プロ野球にも女子チームを支援している球団があるが、これをJリーグのようにプロ野球全体に広げて欲しい。
 そうすれば、もっともっと女子野球が発展するだろう。
 いや、それは野球界全体の発展につながるはずだ。

 この日は、10人にも満たない選手の練習だったが、それでもチーム名のようにみんな輝いていた。

 野球界は女子野球の環境をもっと整えなければいけない。
 その思いを強くして、夕方のグラウンドを後にした。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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