【令和の断面】vol.198「今こそ高校野球に学ぶ」

令和の断面

 春の選抜高校野球が甲子園で始まった。
 球春到来である。

 この時期になるといつも思い出す。
 17歳の春だから、もう48年前のことになる。
 前年の秋の埼玉県大会で優勝した我が春日部高校だったが、甲子園の選抜からは漏れて「補欠校」となった。これは、出場が決まった高校に万が一出場辞退があった時に代わりに出場できる立場のことだ。
 関東からは、習志野(千葉県)、小山(栃木県)、鉾田一(茨城県)の3校が出場し、補欠校の繰り上がりはなかった。当時は、悔しい思いも正直言ってあったが、今になればこれで良かったと思っている。
 もし、我々が出場できることになれば、どこかの学校で「不祥事」があった訳で、その事態に立って本当に出場を喜べたのか?

 自分たちが甲子園に行きたい気持ちはもちろんあったが、他校の涙をよそにはしゃいでいる場合ではなかっただろう。

 我々の甲子園出場はさておき、あの春に悲しい思いで出場を辞退する学校がなくて本当に良かったのだ。

 さて、甲子園の出場辞退(不祥事)については、これまでいろいろな議論がされている。
 誰かの失敗をチーム全体で責任を取る必要があるのか。それはあまりにも酷な対応ではないか。
 一方で、それこそが高校野球の精神だ。そこに教育的価値がある。

 ここはかつての高校球児も悩むところだ。
 どちらにも理があるように思う。
 それでも近年は、処分に当たって、かなり寛容な決定がなされるようになったと感じている。

 ただ、高野連がなぜこうした不祥事に厳しく対応するかと言えば、そこに勝利至上主義や競技優先主義に対する教えがあるのだと思う。
 高校野球は、あくまでも高校生活(勉学)の一環として行われるものであり、甲子園に出場して勝つことも大事だが、それよりも優先されることがあるということだろう。

 それをひと言でいえば「INTEGRITY」である。
 誠実、真摯、高潔、そうしたものを体現する生き方や価値観、正義感を指す言葉だ。

 スポーツを何のためにするのかと言えば、肉体的な鍛錬を除けば、こうした価値観を身につけるためだろう。

 たとえば、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、日本中の小学校にグラブをプレゼントする行為は、こうした崇高な思いから生まれたものだと思う。
 決して、これをやらなくても非難されるようなことではない。
 でも、それをやるのが、そしてやれるのが「INTEGRITY」があるからなのだと思う。

 いま私がいる政治の世界(永田町)では、「裏金」「キックバック」などという行為が発覚し、連日、追及が続いている。しかし、それらはルールの中で行われていることなのでコンプライアンス上問題がないという答弁が繰り返されている。

 本当にそうなのか?
 高校生でも、チームの不祥事を全員で責任を取る。
 国会議員のように秘書だけの責任にはしないのだ。
 そこにあるのは「選挙至上主義」の価値観ではないだろうか。

 始まった高校野球を観て思う。
 私を含め、今、国会議員に求められているのは「INTEGRITY」なのだ。
 そうでなければ、失った信頼を回復することはできないだろう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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