【令和の断面】vol.204「柔道の魅力」

令和の断面

 久しぶりに柔道の全日本選手権(4月29日、日本武道館)をテレビ観戦した。
 小学生時代から野球をやっていたが、新潟の伯父の家に遊びに行くとぶっつけ本場で少年柔道大会に飛び込み参加させられていた。もちろんあっと言う間に投げられてしまうのだが、そんな記憶が残っているからなのだろう。柔道を観るのが好きだし、いつでも自分が戦っているようにハラハラドキドキしてしまう。

 柔道の魅力は、やはり1本を取り合うところにある。
 お互いに組み合って、得意の技を掛け合う。
 組み手の攻防から勝負は始まっている。
 なかなか思うように襟と袖を持つことができない。
 しかし、どちらかが得意の体勢になると試合が動き出す……。

 この日も、組み手争いから目が離せなかった。
 次々と世界レベルの実力者が登場する。
 王子谷剛志
 影浦心
 グリーンカラニ海斗
 羽賀龍之介
 押領司龍星
 佐藤 和哉
 (等々)

 熱戦が続く中、決勝の畳に上がったのは、過去この大会を2度制し10回目の出場となる31歳の原沢久喜と23歳の新鋭中野寛太だった。

 序盤から若さと勢いに任せて中野が攻め続ける。しかし、熟練の原沢は中野の攻撃を上手くいなし、徐々に自分のペースに持ち込んでいく。
 決勝は8分。
 「残り2分で勝負に出る作戦」だった原沢が終盤攻めに出るが、若い中野はまだスタミナを残していた。
 お互いに8分間を戦い抜いて、勝負は旗判定に持ち込まれた。

 赤2本
 白1本

 勝ったのは赤の中野だった。

 「夢みたいっていう感じもする。1年間優勝するためだけに頑張ってきたので、報われたかな。終日、我慢を心に置いて戦えた」

 確かに我慢の連続だった。
 それは相手の技に耐え忍ぶ我慢ではなくて、苦しくても終始攻め続ける我慢だった。

 今大会がいつも以上にスリリングだったのは、以下のルール変更があったからだろう。

 試合時間4分→5分(決勝は8分)
 延長戦なし(旗判定)

 つまり指導を何枚か取られていても、攻撃的姿勢が評価されれば旗判定で勝つことができる。だから最後まで攻め続ける必要があったのだ。

 観ていてつまらないのは、途中でリードした選手がそのまま逃げ切ろうとして消極的な柔道を続けることだ。その点、今回のルールはお互いに攻め合うことが求められる。パリ五輪代表組が出場しない物足りなさはあったが、大会そのものは、ルール改正が柔道の魅力を引き出していると感じた。
 やっぱり柔道はおもしろい。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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