(写真はイメージ)
■修理・再生事業を展開する「Re-Birth」の試み
3年前、子どもの夏休みの出来事だ。自由研究で野球のグラブができるまでを大きな1枚の紙に写真付きで記した。1枚の牛の革や紐からどのようにして形を作り、そして使用できるまで、どのような工程で柔らかくしていくのかをスポーツメーカーの専門家に聞いた。子どもによるとクラスでは先生や野球が好きな友だちは興味深く、発表を聞いてくれたという。
その翌年だったか、夏休みの期間中にグラブ制作を通して、紐通しだけなく再生、修復技術を学び、地球に優しい野球界を作ることを子どもたちに伝えるワークショップがあることを聞き、担当者に話を聞く機会があった。グラブを一から作ることで、道具を大切にする心を育むことができることや、万が一、練習や試合で紐が切れてしまったとしても、自分自身で対処ができるようになる。とても有意義なイベントだった。
この企画は野球グラブを買い取り、修理・再生事業を展開する「Re-Birth」(リバース)の米沢谷友広氏らが発案したもの。「Re-Birth」は使用済みのグラブを再生させ、また使えるようにして販売をする。球界の課題の一つでもある用具の高騰。硬式用グラブは5万円以上もする。決して安い品ではなく、経済的な理由で野球を諦める人だっている。それが子どもであったならば、可能性を潰してしまう。米沢谷さんらは使わなくなったグラブを回収し、独自の技術でリメーク。市場価格の3分の1程度で再生グラブを提供する事業を行なっているのだった。
子どもたちにとって貴重な体験となる“グラブ作り”から、モノを大切にすることを知ってもらう。それをきっかけにして、子どもたちにはいつかそのグラブを手放す時が来たら、“まだ使える”と思う人がいるかもしれないと、グラブにも“第二の人生”が存在することを思い出してほしい。このような子どもの心も育むことができる「Re-Birth」のサポート体制をできるだけ多くの人に知ってもらいたいと感じている。
2024年10月24日。プロ野球界ではドラフト会議が行われ、多くの選手たちがプロの門を叩いた。幼少期から遊んでいた野球で夢を叶えた瞬間でもある。そこには道具があり、与えられた環境下で努力をしてきた証があったはず。こうしたグラブの取り組みも、すべては未来のプレイヤーにつながっている。新しい文化として醸成していくことが野球人口の増加に貢献する。そして、地球環境にも優しい持続可能な世界を創り出すことができる。プロになっても、サスティナブルな野球界であることを心掛けてほしいと願う。