昔は、よくあんなことがまかり通っていたと思う。
他の運動部はわからないが、野球部は練習中に水を飲んだらいけないという不文律があったのだ。少なくとも私が中学生の時(昭和40年代)にはどこの野球部もその掟に従っていたと思う。
だからボールを拾いに行く草むらに水の入った瓶を隠しておいたり、トイレに行く振りをして水を飲んだり、どこの野球部もそうした工夫をしてなんとか脱水症状を逃れていたのだ。
それとは別にこんな不文律もあった。
「野球選手は泳いではいけない」というやつだ。
水に入ると大事な肩や肘を冷やしてしまう。だからプールや海に入ってはいけないというのだ。この珍説がどれほど認知されていたかというと、中学の体育で水泳の時間があっても、野球部員は上記の理由でプールに入るのを免除されていたのだ(地域や先生にもよるが)。
どちらもいまではまったく考えられないことだが、当時は大手を振ってまかり通っていた。
何でこんな不思議な、非科学的なルールが出来上がったのか分からないが、「水を飲んではいけない」という掟は、ボクらが高校1年生の時になくなった。全国的にゲータレードが発売されて、練習中に水分補給した方がよいパフォーマンスができるという説が一気に広がったからだ。
水泳の禁止がどう解けたのかははっきり分からないが、プロ野球選手が練習の終わりに疲れた身体をクールダウンするためにプールに入るようになってからだと思う。海外でキャンプをするチームの選手たちが練習後にプールに飛び込む。そのニュース映像を見て衝撃を受けたことを覚えている。
こうしたことは少なくとも50年以上前のことなので、いまさら思い出しても仕方のないことだし、誰の役に立つ話でもない。
ただ、こうした昔話を引き合いに言いたいことは、今の時代の当たり前が数十年するとまったく違うことになっている可能性があるということだ。
例えば、この夏の甲子園は、日中の暑い時間帯を避けて試合をすることになった。今までは野球に限らずスポーツは昼間にするものだと思われているが、これだけの猛暑が続くと、夏のスポーツは朝と夜にやるものだという考え方が一気に定着することになるかもしれない。
また夏の甲子園はドーム球場でやらなければ危険だという認識が広がって、もしかすると球場の変更すら起こるかもしれない。
投手の疲労と多くの選手の試合参加を考えると、高校野球の「DH制」導入は時間の問題かもしれない。7イニング制も現実味を帯びてきた。
先日行われたプロ野球のオールスターゲームでは、試合中に選手がマイクとイヤホンを付けて放送席と会話しながら試合をしていた。
こんなことは、もう技術的にはいくらでも可能だから、チーム全員がヘッドセットをしてベンチの指示を聞いたり、攻撃のサインも耳で聞いたりする時代になるかもしれない。これも試合時間の短縮につながる。
まだまだ荒唐無稽に聞こえるこうしたことも、これからどうなるか分からない。大事なことは変化を怖がらずに、どうしたら時代のニーズに適うかということを考えることだ。
スポーツ界もこれからきっと大きな変革の時代を迎えることになるだろう。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。