古巣ヤクルトの新監督に池山隆弘氏(59歳)が就任した。
現役時代、彼と一緒にプレーしていた時には「イケ」と呼んでいたので、池山隆弘氏と書いたりすると他所他所しくなってしまうが、ここはしっかりと距離を置いて新監督について書いておこう。
私が現役を引退してもう40年近くになるが、当時クリーンナップを打ちヤクルトの看板選手だったのが池山新監督だ。
「ブンブン丸」の愛称で親しまれ、とにかく思い切りの良いバッティングをしていた。
積み重ねたホームランは「304本」。
三振を怖がらずに常にフルスイングを仕掛けるバッターだった。
しかし、彼のすごさはその豪快な打撃だけではない。
私の印象に残るのは、むしろショートとしての守備のうまさだ。
とにかく肩が強い。
三遊間の深いところからでも、矢のようなボールを投げることができる。
おまけに守備範囲が抜群に広く、グラブさばきも柔らかくて巧みだ。
その守備は、まるで中南米出身の選手のように軽快で自由な守りだった。
だから見ていても楽しい。
それは同じ内野手として、嫉妬してしまうほどの守備。
現役時代の池山選手は、打ってよし、守ってよし、走ってよしのまさに三拍子揃ったスター選手だった。
そんなイケが、監督になってどんなことを目指すのか注目していたが、彼が打ち出した方針は、極めて本質的なチームマネジメントだった。
「対話」「元気」「笑顔」
まるで学校の先生が生徒たちに求める姿勢のようなこと。
果たしてこれで、プロ野球のチームが上手くいくのかどうか。
これは私もプロ野球の世界にいたので、実感を持って言えるが、実は池山監督が訴えているこうしたことは、戦う集団においても大事なことなのだ。
なぜならプロ野球の世界では、選手サイドから首脳陣に話しかけることは滅多にない。調子の良し悪しやどこかが痛いなどということを選手はまず口にしない。そんなことを言い出せば出番を失うことにもなりかねない。だから監督やコーチと日頃から「対話」できることは、選手にとってはありがたいことだ。対話を射通じてお互いの理解が深まる。それが信頼関係の醸成にもつながる。
「元気」を出すことも当たり前のことだが、打てなかったりエラーをしたり、野球には精神的に凹む要素が多い。その解決に悩むことは大事なことだが、下を向いていたのではなかなかうまくならない。ファンのためにも元気を出してプレーするしかない。
そして「笑顔」にも同様な効果がある。とにかくいつも笑顔で前向きに頑張る選手が伸びていくのだ。
これは野球に限らず、私たちが日常で自分らしさを発揮するための処方とも言える。6年間、2軍の監督を務めてきた池山監督は、さまざまな選手と接してきた中で、「対話」「元気」「笑顔」の大切さを学んできたのだろう。
さあ、ヤクルトがどう変わっていくのか。
池山新監督の手腕に期待しよう。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。