【令和の断面】vol.129「立教55年ぶりの箱根駅伝」

令和の断面


「立教55年ぶりの箱根駅伝」

 2023年正月の箱根駅伝は、間違いなくこのチームに注目が集まるだろう。
 なんと55年ぶりの出場となる立教大学だ。

 10月15日に行われた第99回箱根駅伝予選会で立教大学が6位に入り出場権を確保したのだ。
 2022年正月の成績で上位10校がシード権をゲット。
 残る10校をこの予選会で決めるのだ。
 コースは、陸上自衛隊立川駐屯地をスタートして立川市街地を抜けて国営昭和記念公園でゴールするハーフマラソン(21.0975キロ)だ。出場各校の上位10人の合計タイムで順位が競われる。

 予選会と言っても強豪揃いだ。6位立教の上には1位から大東大、明大、城西大、早大、日体大がいる。立教の後にも7位山梨学院大、専大、東海大、国士館大と続き箱根駅伝ではお馴染みの大学が並ぶ。
 そんな中で立教が6位に食い込む。
 しかも55年ぶりの箱根駅伝だというから、立教大学関係者はお祭り騒ぎだ、とある卒業生から聞いた。

 実は90年代に、立教大学で非常勤講師をしていた。
 その時から関係者から「箱根駅伝は悲願だ」と聞いていたので、どのくらい盛り上がっているかは見当が着く(笑)。

 今回の勝因は、選手10人が誰もブレーキにならずそれぞれの好タイムをマークしたことだ。2024年に創立150年を迎える立教大学は、「立教箱根駅伝2024」というプロジェクトを進めていた。そのためにチカラのある選手を集めていたこともあるのだろう。しかし、50年以上も出場していなければ、強化方法はもちろん、調整の仕方も勝ち方もそれを知るOBは少ないはずだ。

 その意味で今回の復活劇は、現役のランナーでもある上野裕一郎監督(37歳)の存在が大きいといえるだろう。
 長野県の佐久長聖高校から中央大学に進んだ上野監督は、4年連続で箱根駅伝を走った中大のエースだった。その後エスビーからDeNAに移籍して社会人でも活躍を続けたスピードランナーである。
 その上野監督の指導法が奮っている。
 つねに選手と一緒に走って「私に勝てば箱根駅伝に行けるよ」と身をもって一流選手のスピード感を体感させたのだ。
 その甲斐あって、敵わなかった選手たちの中から、1500メートルやハーフマラソンで上野監督を破る選手が現れる。
 こうなれば相乗効果で陸上部全体が活気づいていく。

 今はどんなスポーツでも監督と選手の分業が進んでいるが、本来のスポーツは実力者と一緒にプレーして、そこからコツを盗んでうまくなっていくのだ。かつてはどのスポーツにも監督なんていなかった。その意味では、上野監督のスタイルは、スポーツの原点に帰った指導法とも言えるだろう。

 上野監督は出場だけに満足せず、「10位以内に入ってシード権を取りに行く」と目標をぶち上げた。
 このところ続く青学旋風に、注目度抜群の台風の目が現れた。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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