【令和の断面】vol.131「オールブラックスに惜敗 日本代表に高まる期待」

令和の断面


「オールブラックスに惜敗 日本代表に高まる期待」

 それは日本ラグビー界にとって屈辱の歴史と言っていいだろう。
 1995年、南アフリカで開催された第3回W杯で日本代表はオールブラックス
 (ニュージーランド代表)に145対17と歴史的な大敗を喫している。
 そればかりかウェ―ルズに57対10、アイルランドにも50対28と相手にしてもらえなかった。

 早い話、日本ラグビーは世界に対してまったく歯が立たなかったのだ。

 唯一の勝利は第2回大会で格下のジンバブエに勝っただけ。
 それ以外は1987年第1回大会(オーストラリア)から2011年第7回大会(ニュージーランド)まではまったく勝つことができなかったのだ。

 その敗北の歴史を劇的に変えたのは、「ブライトンの奇跡」と呼ばれる2015年第8回大会(英国)初戦の南アフリカ戦。34対32で南アフリカに勝って、日本代表は世界中を驚かせた。
 以来日本は、世界の強豪とほぼ互角に渡り合えるようになっていく。

 日本で開催された2019年第9回大会では、ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドを撃破し、決勝トーナメント進出を果たした。準々決勝では南アフリカに惜しくも敗れたものの、かつてのような「安心安全な練習相手」ではなくなった。甘く見たら大けがをする危険なチームに変身したのだ。

 その進化の要因はさまざまあるだろうが、ひと言でいえば「和魂洋才」に徹したことだろう。
 2007年第6回大会(フランス)、2011年第7回大会と日本代表の指揮を執ったのは、ニュージーランドの英雄・ジョン・カーワンだった。
 そして日本代表の躍進は、2015年第8回大会のエディー・ジョーンズ監督(オーストラリア)から始まり、2019年第9回大会のジェイミー・ジョセフ監督(ニュージーラン)に引き継がれていく。

 日本的な献身性や連動を活かしつつ、スピードとスタミナで相手を切り裂いていく。戦術やトレーニング方法は世界最先端のトレンドを取り入れながら、メンバーに外国人選手を大胆に起用し、多国籍軍で挑んでいく。和の精神を持ってチーム一丸となって戦いながら、要所では個の力で状況を打開する。そのチームの結束が日本代表の持ち味になってきたのだ。

 10月29日、新国立競技場。
 オールブラックスを迎えたテストマッチには、過去最多65188人の観客がスタンドを埋めた。日本代表はその期待に応え、オールブラックスと堂々と渡り合って38対31で惜敗した。
 145対17の悪夢から27年。
 もう、あの弱い日本代表を語る人はいない。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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