【令和の断面】vol.187「Stay hungry」

令和の断面

 参議院議員になって1年余り。
 これからの活動の指針になるキャッチフレーズのようなものが欲しいと思い、この年末に以下のフレーズを作った。

 「Stay blue(地球も人も青くあれ)」

 そこにはこんな短文も書かせてもらった。

  たとえ青いと言われても
  濁るよりマシだ
  信じた道を歩いていこう
  より良い社会を築くために

  美しい環境を守るのも
  私たちの使命だ
  今が未来を決める
  すべては次世代のために

  青は若さ 青は希望
  地球も人も青くあれ

 政治家個人の標語をこんなところに書かせてもらうのは基本的にはNGだと思うが、今回はご容赦いただきたい。

 というのも、すでに読者もお気づきのように、このフォーマットはアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の有名な言葉をまねしたものだ。

 ジョブズ氏が言ったのは、「Stay hungry」だ。
 満足するな。
 貪欲であれ。

 この言葉が好きだった私は、ジョブズ氏をパクって「Stay blue」とさせてもらったのだ。

 ジョブズ氏の「Stay hungry」は、スタンフォード大学での講演で、アメリカの学生に向かって述べられたものだが、これはすべての世代、老若男女が受け取るべきものだろう。
 そしてとりわけ、スポーツやっている者には、レベルが上がれば上がるほど重要な考え方といえるだろう。

 例えば、この言葉をそのまま実践しているのが大谷翔平選手だといえる。

 160キロを超えるボールを投げる投手だけに飽き足らず、打者としても最強のスラッガーを目指して、二刀流でプレーする。
 そして日本での成功に満足することなく、今は戦いの舞台をアメリカに移している。
 2度目の肘の手術でまた投げられなくなっても、その志が揺らぐことはない。
 とにかくこんなに「ハングリー」な選手はいない。

 筆者は、大谷選手の高校の後輩にあたる佐々木麟太郎選手(花巻東高校)の動向にも注目している。この秋、プロ野球への「志望届」を出さず、アメリカの大学に進学することを選んだ。日本のプロ野球を目指せば、ドラフト上位での指名が確実だっただろうが、それを拒んでアメリカへの留学を選択した。
 これがどんな結果を生むのかはわからない。

 おそらくアメリカでの生活が、野球だけにとどまらず彼を人としてさらにスケールアップさせることは間違いないだろう。
 アメリカで成長した佐々木選手が、そのまま大リーグのドラフトにかかることも楽しみだ。たとえそれが叶わなくても、日本に戻ってプロ野球での活躍も期待される。
 私には、この選択がとても「Stay hungry」に映る。

 最初から正解なんかない。
 自分で切り開いた道が、やがて多くの人に理解され、応援されることを大谷翔平選手のチャレンジに見た。
 佐々木選手の挑戦が何をもたらすのかも楽しみだ。
 アメリカで自分らしく伸び伸びと暴れて欲しいと思う。

 「ハングリー」とは、安易に結果を求めないことでもあるだろう。
 とにかく信じた道を歩いていくしかない。
 その意味では、私も「Stay blue」である。

 豊かになった日本。
 しかし、今、私たちに求められるのも「Stay hungry」であること、と記して、今年最後の原稿とします。
 みなさま、良い年末年始をお迎えください。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
バックナンバーはこちら >>

関連記事