令和の断面

vol.226「県立高校は秋の大会を狙え」

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     野球界はメジャーリーグのポストシーズンゲームやプロ野球のクライマックスシリーズの動向に注目が集まっているが、そうした中で高校野球が粛々と行われている。別に隠れてやっている訳ではないので「粛々と…」などと書かず「堂々と…」と言えばいいのだが、世間の関心はやはり日米のビッグゲームに集まっていることだろう。

     しかし、今この時期になぜ高校野球かと言えば、来春の甲子園(選抜)が懸かる重要なゲームが行われているからだ。

     例えば奈良県大会では、30数年ぶりに県内有数の進学校、奈良高校が決勝に進み近畿大会進出を決めた。残念ながら決勝で負けて優勝こそ逃したが、近畿大会の結果次第では選抜出場の可能性が残っている。そればかりか、近畿大会への出場で21世紀枠でも有力な候補になったと言えるだろう。

     思えば、もう半世紀前のことになるが、私の母校、埼玉県立春日部高校も昭和50年(1975)の秋の県大会で優勝し関東大会に出場した。その時の主将でショートを守っていたのが、筆者・青島健太である。

     1回戦の神奈川・横浜商業に勝って準決勝に進出したが、準決勝で栃木・小山高校に負けてベスト4に終わった。選抜には、準決勝に進んだ4校のうち春日部高校を除く3校が選ばれて、我々は補欠校となった。当時はまだ21世紀枠もなかったので、進学校の快進撃は関東大会で終わった。

     ここでひとつ思うことがある。

     誤解を恐れずに言えば、県立高校や進学校が甲子園を目指すならば、2年の秋に全集中で臨むべきだろう。もちろん高校野球は3年の夏まで続くのだが、ワンチャンあるとすれば、春の甲子園だ。

     理由はいくつか挙げられる。
     まず、強豪校であっても、夏の大会が終わって2年生の新チームでの試合は始まったばかりだ。この時点でレギュラーになった選手も多くいるはずだ。つまり、選手の経験という点では、まだどこの学校も差はないのだ。

     また、春の甲子園につながる大会であっても、前年秋の大会ではモチベーションが低い。3年夏の最後の戦いのような意気込みで臨むチームは少ないはずだ。だからこそ全集中で臨めば、県立高校にもチャンスがある。

     これは所謂(いわゆる)、弱者の戦略だ。
     半分冗談だが、半分本気だ(笑)。

     このところ甲子園に出場するチームは、圧倒的に私立勢だ。
     有望な選手が集めやすかったり、練習環境が充実していたり、私立高校の強さが光っている。
     県立高校にとって、甲子園は遠い大会になっている。
     しかし、このまま県立高校が黙っている訳にはいかない。

     県立高校は2年生の秋が最後のシーズンだと思って臨む。
     その覚悟が、秋の高校野球をさらに面白くすることだろう。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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