令和の断面

vol.255 佐々木朗希が心配だ(続編)

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     前回の当コラムで、なかなか調子の上がらないドジャース佐々木朗希投手が心配だという原稿を書いた。
     その後、続報が入ってきて数週間前(2試合くらい前)から肩に違和感を覚えて、思うような投球ができなかったという状態が本人から語られた。
     その症状は「インピンジメント」と呼ばれ、肩内部の関節唇と腱板がぶつかって痛みが生じるものだ。おもに肩に疲労が蓄積すると発症するらしい。
     そのためIL(故障者リスト)入りし、しばらくは「ノースロー」で回復を待つことになった。
     ロバーツ監督は、その離脱期間について「どのくらいかかるか分からない」と述べ、「タイムラインはまったくない」と治療を最優先する意向を示した。
    
     前回の原稿では、以下のようなことを書いた。
     (前略)
      もっと自分のペースで投げて欲しい。
      いくら力があってもリラックスが必要だ。
      佐々木投手には、自分の家で遊ぶように、伸び伸びと投げて欲しいのだ。
      今の彼に必要なことはその種のことだと思う。
      言い方を変えれば、真面目に投げすぎている。
       (後略)
    
     佐々木に必要なことは、チームメイトとのコミュニケーション。チームで孤立している感じがするとその懸念を書いたのだ。
     最後の登板となったダイヤモンドバックス戦についても
     「61球を投げて、ストライク率が過去最高の70.5%と高かったのは、ストライクをどんどん投げて早く終わらせたいという思いが無意識に働いていたのかもしれない。またそこには、思うような成績が上がっていないという焦りも当然あるだろう。」
    
     この見立てが違っていたことは、佐々木投手に謝らなければいけない。
     肩の痛みを感じながらも彼は必死に投げていたのだ。70.5%のストライク率は、肩が痛いので球数をできるだけ少なくしたかったのだ。
     そしてロバーツ監督も、そんな佐々木のことをこう労わっている。
     「彼は闘争心を持ち、チームの一員として戦い続けたかったと思うし、投手陣にケガ人が多いことも知っていたからチームのことも考えたと思う」
    
       だから佐々木は投げることで精一杯でチームメイトとコミュニケーションをとる余裕などなかったのだ。その状態を知らなかったことは、本当に申し訳ないと思う。
     ただ、そんな佐々木にロバーツ監督はこうも言っている。
     「コミュニケーションは双方で成り立つものだから、選手が言ってくれなければ我々は分からない。ロウキには、もっとオープンに話してくれれば球団がそれによって選択肢ができるのだと学んでほしい。今回のIL入りは、ロウキにとっていい学びの機会になった」
    
     佐々木に「もっとオープンに話してくれれば……」と願うロバーツ監督の思いが私の感じていたことなのだ。だから前回の原稿は半分(勝利に焦っていた)外れて、半分(コミュニケーション不足)当たっていたことになる。
    
     佐々木投手は、誰よりも我慢強くチームのことを思って痛みをこらえて投げていたのだ。
    
     抱えている故障をチームにどう伝えるか。
     ここには日本とアメリカの違いもある。
     しかし、ここはロバーツ監督の考え方が正論だろう。
     「コミュニケーションは双方で成り立つもの」
     「もっとオープンに話してくれれば球団がそれによって選択肢ができる」
    
     佐々木朗希、この素晴らしい逸材がケガを乗り越えて、さらに大きくなって戻ってくることを楽しみに待とう。
    
    
    

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