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Vol.50 2年分の数字が語ること――若手選手のセカンドキャリア意識はどう変わったか

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    ■「考えていない」から「わからない」へ

     前号(Vol.49)では、NPBが発表した2025年のセカンドキャリアアンケートをもとに、若手選手たちが「引退後の生活」をどう意識しているかを見た。43パーセントが不安を抱え、やってみたい仕事のトップは「会社経営者」。その数字の読み解きは前号に譲るとして、今号ではもう一歩踏み込んでみたい。

     NPBはこの調査を毎年実施している。2023年と2025年の数字を並べると、表面上は似ているようで、細部に変化が見えてくる。そして取材を重ねると、数字だけでは見えてこない景色がある。今号はその比較と、現場で聞いた声を重ねながら読んでいきたい。

     最も目を引く変化は、引退後の進路を「考えていない」と答えた選手の割合だ。

     2023年:42.5% → 2025年:11.1%

     数字だけ見ると劇的な改善に映る。だが、2025年の調査には「何を考えたらいいかわからない」という選択肢が加わっており、これが44.4%を占めた。つまり、「考えていない」から「考えたいけど、どうすればいいかわからない」への移行が起きた、と読む方が自然かもしれない。

     取材をしていて、よく耳にする言葉がある。「自分は野球しかやってきていないから……」というやつだ。でも正直に言うと、これを言う選手はものすごく多い。みんな同じ不安を抱えている。だからといって、それを悲観する必要はないと私は思っている。野球しかやってこなかった人間が、野球以外の世界に出てもちゃんとやっていける。そういう人たちを、この仕事で何人も見てきた。

    ■「やってみる」しか、最初の一歩はない

     取材で会った元選手の多くが、セカンドキャリアの入り口をこう語る。「現役時代のつながりで声をかけてもらった」「お世話になった人が引っ張ってくれた」。縁から始まるケースが圧倒的に多い。

     最初から「これがやりたい」と決まっている人は、むしろ少数派だ。とりあえず飛び込んでみて、やってみて、そこで見えてくるものがある。「ひとまずやってみるしか選択肢がなかった」と笑いながら話してくれた人が何人もいた。でも、その「ひとまず」に全力で打ち込んでいるうちに、気づいたら自分の場所ができていた、という話をよく聞く。

     逆に、「どうせ自分には無理だから」と最初から話を聞く耳を閉じてしまう人もいる。それは、もったいないと思う。やってだめならやめればいい。そこで見えるものがあるから、という言葉を、ある元選手から聞いた。きれいごとに聞こえるかもしれないけど、実際にそうやって道を切り開いてきた人たちがいる。

    ■社長は、休まない

     「会社経営者」志望はアンケートで2年連続トップだ(2023年:20.1% → 2025年:19.6%)。独立・起業への憧れは、野球界だけでなく今の若い世代全体に広がっているトレンドとも重なる。

     ただ、実際に会社を経営している元選手たちと話すと、一様に言うことがある。「休みがない」「寝られない」。現役時代の方が体は楽だったかもしれない、という人もいる。

     「社長になった」と言うと聞こえはいい。でも実態はそんなにかっこいいものじゃない、という話もよく聞く。開業した直後、スケジュール帳が真っ白なことへの不安から、とにかく仕事をかき集めるところからスタートする。そこから少しずつ埋めていく。最初の一年はそれだけで精いっぱいだった、という人が少なくない。

     もちろん、それでもやりがいがあるからやっている。でも、アンケートの「会社経営者になりたい」という数字の裏に、どこまでリアルなイメージがあるかは、少し気になる。「かっこいい」「自由そう」というイメージと、真っ白なスケジュール帳の前で途方に暮れる最初の日との間には、けっこうな距離がある。

     「海外球団で現役続行」が2025年のアンケートで17.8%と2位に浮上した。2023年の調査では上位に入っていなかった項目だ。

     実際の進路データを見ると、2025年に戦力外・引退した選手のうち海外チームへ移籍したのは17人で、前年の3人から大幅に増えた。メキシコと韓国がそれぞれ5人。意識と現実が、少しずつ一致してきている。日本でのキャリアが終わっても、ユニフォームを着られる場所が広がっている。それを知っている選手が増えたということだろう。

    ■2年後、また数字は動くだろう

     NPBの調査が積み重なることで、少しずつ「変化の輪郭」が見えてきた。不安の総量は減っていない。でも、その不安の持ちかたが、じわじわと変わってきている気がする。

     数字では見えない部分を、取材は補ってくれる。みんな同じ不安を抱えて、それでもとりあえず飛び込んで、気づいたら立っていた。そういう話の積み重ねが、アンケートの数字を少しだけ立体的にしてくれる。

     また2年後、同じ宮崎で、同じ問いを投げかけてみてほしい。そのとき数字がどこに動いているか。それがたぶん、今の野球界がセカンドキャリアとどう向き合っているかの、一番正直な答えになるはずだから。

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