令和の断面

vol.271 藤川球児監督、見事なり

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     9月7日、本拠地甲子園球場で阪神タイガースが史上最速のリーグ優勝(126試合、78勝45敗3引分、勝率6割3分4厘)を決めた。この時点でセ・リーグ各チームは勝率5割を切り、阪神以外はすべて負け越している。その意味でもぶっちぎりの優勝と言えるだろう。
    
     チームを率いたのは、就任1年目の藤川球児監督。
     コーチ経験もなくいきなり指揮を執ることになった藤川監督には、「大丈夫か?」という不安の声もあったが、そんな懸念を見事に払拭する素晴らしい優勝だった。
    
     藤川監督の采配に関しては、選手に気を配り、それぞれの力を十分に発揮させるマネジメントが光った。
    
     選手を批判するようなことは一切言わない。
     結果に関しては、「すべて自分の責任」と選手を伸び伸びとプレーさせた。
     打撃陣では、不動の上位打線が見事に機能した。
    
     1番近本
     2番中野
     3番森下
     4番佐藤(輝)
     5番大山
    
     彼らには十分に休養を与えながら、盗塁と送りバントを絡めて堅実に攻め続けた。おかげで佐藤がセ・リーグ断トツのホームラン(36本)を量産し、打点においては佐藤、森下、大山が上位3傑に名を連ねた。
    
     しかも接戦に強かったのは、ブルペンが抜群の安定感を見せたからだ。
     なかでも中継ぎで圧倒的な結果を残したのは石井大智投手だ。
     今シーズンは、48試合連続無失点の日本記録を更新中だ。
     加えて阪神の連続イニング無失点記録は、藤川球児監督の47回2/3だが、石井投手はこれに迫る47イニング無失点で現在も継続中だ。
    
     石井投手は、シーズン中に藤川監督からもらったアドバイスが、ずっと自身のピッチングを支えていると言う。
    
     それは「勝とうと思うな」という一言だった。
     勝ちパターンで送り込まれる中継ぎ投手は、自軍のリードを背負って投げることになる。そこには先発投手の勝ち星もかかっている。同点になるだけで、その勝ち星が吹き飛んでしまう。救援投手にはつねに重いプレッシャーがのしかかっている。
    
     藤川監督は、抑え投手としてその重圧を背負い続けてきたのだ。
     だから、その経験からのアドバイスが「勝とうと思うな」ということなのだ。
    
     誰だって負けて良いと思って投げる投手はいない。
     いつでも「勝とう」と思ってマウンドに上がる。
     しかし、そこで何をすべきかと言えば「勝とう」と強く思うことではない。
     勝つために何をすべきかを考えて、そこに全力を投入することだ。
     その心持を石井投手は「凡事徹底」と表現する。
     結果を考えても仕方がない。目の前のやるべきことに集中する。
     その凡事の積み重ねが、勝利を連れてくる。
    
     「勝とうと思うな」は、プレッシャーからの解放であり、それこそが勝利へのアプローチなのだ。
    
     勝敗を離れて目の前のプレーに集中する姿勢が、投手陣だけでなくチーム全体に徹底されている。
     そこに阪神躍進の理由がある。
    
     シーズンはまだまだ続くが、藤川球児監督、見事な采配である。
    
    
    

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