杞憂という言葉がある。
日常的に使う機会は少ないかもしれないが、いま私の頭の中には心配としてこの言葉が浮かんでいる。
いよいよ始まるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)についてである。
何を心配しているかと言えば、前回優勝しているので今回もきっと勝ってくれるだろうという楽観的な期待だ。
それもそのはず。
投打に豪華なメンバーが揃った。
まず打撃陣。
大谷翔平(ドジャース)がやる気満々で参戦し、今回は打者だけで勝負する。
鈴木誠也(カブス)も合流。2日の強化試合(対オリックス)で早速ホームランを打った吉田正尚(レッドソックス)も間に合った。村上宗隆(ホワイトソックス)と岡本和真(ブルージェイズ)も調子が上がっている。
ここに日本プロ野球を代表する打者たちが加わる。
佐藤輝明(タイガース)、近藤健介(ホークス)、牧秀悟(ベイスターズ)、森下翔太(タイガース)、小園海斗(カープ)等々。
投手陣も充実の顔ぶれだ。
メジャーからは菊池雄星(エンゼルス)。ドジャースから山本由伸と佐々木朗希。昨シーズン10勝を挙げた菅野智之(ロッキーズ)も合流。
国内組は、宮城大弥(オリックス)や伊藤大海(日本ハム)、大勢(巨人)や高橋宏斗(中日)など実力者が揃った。
メンバーだけを見たら豪華だ。
それは結構なことなのだが、心配の種をひと言でいえば今回「ヌートバー」がいないことだ。
前回、センターを守って1番を打ったヌートバー。
ヒットを打つと塁上でコショーを砕くアクションでチームを盛り上げた。
彼の存在が、前回のチームでは欠かせないものだった。
それは1番打者としての戦力だけにとどまらず、チームのムードメーカーとして即席の代表チームを一つにする存在だった。しかも足で相手を掻きまわす。
今回のチームを見回した時に、彼の役を果たす選手が見当たらないのだ。
鈴木も吉田も、どちらかと言えば控えめな選手だ。村上や岡本もおとなしい。
森下や牧は、自軍ではムードメーカーだが、果たして代表チームでその役をこなせるか。
その意味では大谷を1番に置いて、走塁にも期待したいところだが、シーズンでは投手としてマウンドに上がる大谷に、井端監督もそこまで求めることはしないだろう。
チームの浮沈は、初戦の台湾戦にかかっている。
ここで大谷をはじめ何人かの打者が勢いをつかめば流れに乗ることができる。
逆に台湾戦で打線が沈黙すれば、そのまま全員の調子が上がらずアジアラウンドで終わってしまう可能性もある。
そこに私の心配がある。
今大会のムードメーカーは誰か?
誰がヌートバーになるのか?
杞憂に終わるとよいのだが……
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。