ゲーム中のキャッチャーかピッチャー、あるいはバッターが頭を軽く叩く。
これが何のサインだかお分かりだろうか?
今シーズンからメジャーリーグで導入されている「ABS(自動ボールストライク判定システム)」を要求する時のサインだ。
主審の判定(ボール、ストライク)に不服がある時は、ビデオ検証を要求することができるようになったのだ。
つまりロボット審判が登場したのだ。
両チーム1試合に2回まで要求することができて、主審の判定が間違っていた時は、回数が減ることはない。
これは塁上のプレーの検証を求める「リクエスト」と同じ運用だ。
メジャーリーグでは、数年前からマイナーリーグで実証実験を繰り返してきた。
1試合に何回のチャンスを与えたらよいのか。もしすべての投球を「ABS」に委ねたらどうなるのか。「ABS」の導入によって試合時間にどのような変化があるのか。
選手の受け止め方はどうなのか。ファンはどのように感じているのか。こうしたことをすべて検証して導き出された結果が、前述の運用ルールとなった。
頭を叩く動作は、プレー後およそ2秒以内に、ピッチャー、キャッチャー、バッターの当事者本人がコールしなければならない。そうでないとベンチで映像を確認したり、第三者の判断を待って要求されたりすることになるからだ。
「ABS」は、すべての球場で導入され、ポストシーズンも使用されることになる(メキシコでのゲームなど機器が設置できないところでは使わない)。
いやはや、それにしてもすごい時代になってきた(笑)。
すべては、こうしたことができるハード(機器)の進歩があってのことだが、技術的には何の問題もなく運用できてしまう。十数台のカメラを各所に設置して、この映像を解析すれば自動的に判定ができるのだ。
問題は、実際にプレーする選手たちがどう思っているかということだが、選手の評判は概ねよい。
ピッチャーも打者も大事なところでミスジャッジがあることを嫌っている。
これでお互いに納得がいけば、無用なストレスは回避できることになる。
審判も導入に異論はないようだ。
今やメジャーリーグの投手は160キロを超えるボールを投げてくる。
これを正確に判定する審判の技術も相当なものだ。
しかし、人間である以上、一定の判断ミスは付いて回る。
これを「ABS」に補ってもらうと考えれば、お互いに補完される関係になる。
そして楽しみが増えるのは、ファンへのサービスだ。
ホームプレートを横切るボールを体感するのは選手だけの楽しみであったが、これが可視化されることで、ファンもその醍醐味に触れることができる。
数ミリ、数センチの判断をめぐって選手と審判が戦っていることを知ってもらうことは、さらなる野球の魅力に出会うことにもなる。
アメリカはこうした改革をどんどん進めていく。
日本のプロ野球では、来シーズンからやっとDH制(セリーグ)が導入されるレベルだ。日本の改革は、アメリカの後を受けて始まるのが通例だ。
どうしたら野球が面白くなるか。
ファンが何を求めているのか。
メジャーに学ぶことは、まだまだたくさんある。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
