先週、驚きのニュースが飛び込んできた。
もちろん悪い知らせではない。
プロ野球界が、「野球振興くじ」の導入に向けて議論を進めるというのだ。
16日に都内で行われたプロ野球12球団オーナー会議。
ここであるオーナーから「野球振興くじ」導入の提案がなされたという。
この日、議長を務めたDeNAの南場智子オーナーは、記者の前で次のように報告した。
「野球振興事業の財源確保ために振興くじを活用する意見が出た。検討を進めることに異論を唱えるオーナーはいなかった。スポーツくじを進めるに際し、留意すべきポイントを議論した」
「野球くじ」に関して、NPBはここまで一貫して慎重な態度を崩さなかった。
2015年、18年とスポーツ議員連盟からの要請で「野球くじ」について協議してきた経緯があるが、賭けの対象になることへの懸念が強く、いずれも立ち消えになってきた。
これまで野球界は、どのようなものであれ「賭け事」には、厳しい反応を示してきた。
往年の野球ファンはみんな知っているが、昭和40年代に起こった「黒い霧事件」がトラウマになっているのだ。
当時の西鉄の選手が「八百長事件」に関与したとして、複数の選手が永久追放などの処分を受けた。
以来、野球界はギャンブルとは一切関わることなく今日まで来ている。
もちろんその姿勢は、今も変わることのない野球界の基本的な考え方だが、時代の流れの中で環境が大きく変化してきた。
野球人口が激減しているのだ。
07年には160万人だった競技人口が25年に78万人まで減っている。とりわけ少子化の影響もあって、こどもたちの野球離れが深刻な状況に陥っている。
中学の部活動では、部員数の減少に加えて指導する先生の働き方にも改善が求められている。休みなく土曜日、日曜日も指導する体制が問題視されているのだ。
そのため週末や休日は、外部の指導者が担当する流れが始まっている。
そうなれば、当然、グラウンドの確保や指導者への謝礼などが発生することになる。つまり今まで以上に経費が必要になる。
では、財源をどうするのか。
そこで出てきた議論が「野球振興くじ」の導入である。
検討されているのは、コンピューターが無作為に選んだ勝敗に賭ける「くじ」なので八百長などにつながる心配はないと理解されている。
現行の「スポーツくじ」はサッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグを対象に行われているが、25年には1000億円以上を売り上げている。
こうした売り上げをスポーツ団体や自治体を通じて配分している。
そこに野球が加わるかもしれない。
アマチュアとの協議も進めなければならないが、野球界には大きな課題が突き付けられている。
これからの前向きな議論に期待したい。
令和の断面
青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。