■「地域を応援するチーム」にならないといけない
――3年目を迎えて、独立リーグ運営の「勝ち筋」が見えてきたとおっしゃっていました。どういうことですか?
「従来の独立リーグと違う切り口でやらないと意味がないなっていうのがあったので、産業界の意見をすごく大事にしました。野球を知らない層の顧問の方々からの意見とかを取り入れて。感じたのは、いかに地域になくてはならないチームになるかですね。ドリームズがあることで地域が明るくなったとか、地域の商品が売れるようになったとか、ドリームズがハブとして集まるようになったとか、そういう活動がメインで本当にがっつりやらないと、応援されるチームはできないなって」
――独立リーグの現状についてはどう見ていますか?
「僕らは応援してもらうチームというよりも、地域を応援するチームにならないといけないなとすごく感じています。逆に僕らが地域を応援して、地域の情報を一緒に発信することで、結果的に僕らを応援してくれるっていう循環が必要だなって。それが独立リーグが生き残るための価値だと思っています」
――具体的にはどんな活動をしていますか?
「練習と同等にボランティア活動を大事にしています。耕作放棄地を使った農業をやったりとか、高齢者の方の片付けなどのお困りごとに選手が行って解決するとか。商工会の青年部にも入りましたし、観光協会などいろんな協会にも顔を出していって。ボランティア活動を通じて地域に貢献することが、法人スポンサーになってもらったり、ファンクラブに入ってもらったり、球場に見に来てもらうという形でチームに還元されてきています」
――外国人選手も多いチームで、そのビジョンを伝えるのは難しくありませんか?
「外国人の子たちが来てる国は野球の途上国なので、プロ野球選手の先輩たちがいないんですよ。なので最初に来た時にプロ野球選手というのは野球をするだけじゃなくて、地域の人にファンになってもらえる人間でないといけないって教えやすくて。買い物した時に挨拶をするとか、ゴミを道路に捨てないとか、いつも整理整頓をするとか、そういうのがプロフェッショナルなんだよっていうのを教育しやすかったですね。農業のボランティアや朝の掃除、試合後のファンのお見送りも、一切嫌がらずにやってくれています」
■技術があってもプロになれない選手に欠けているのは「覚悟」
――元プロとしての視点から、技術があってもプロになれない選手には何が足りないと感じますか?
「今のプロ野球選手は人格者に近い人じゃないと厳しいかもしれないですね。とんがっていればっていうのは、今だと難しいかもしれない。それと、プロになったからといって成功じゃなくて、その後にどう生きていくかになった時に、ちゃんと生きていける子はある程度、覚悟を持ってる子の方がやっぱり生きていくんですよね。技術が高くてもいけない子に欠けているのは、そういった人格的な成長と、その後の人生を生き抜くための覚悟だと思います」
――監督として今一番懸念していることは何ですか?
「チームには可能性がいっぱいあって面白いんですけど、悪く言えば散らかる要素も持っているんですよね。全部が散漫になる可能性がある。まず1つ絞ってそれを形にして次に取り組むというのをコントロールしてやっていかないと、スピードが上がっていかない。小さい町なのでまず地域に根付く活動をして、その次に周辺から広げて、中央にっていう順番が3年やってベストだなとわかりました」
――最後に、引退後のキャリアを考えているアスリートへ、今の立場から伝えたいことはありますか?
「まず会社を作ってみてから、俺に何ができるんだろうって考えてスタートしたっていう感じなので、深く考えすぎずにやってみるっていうのは思いますね。日雇いバイトもやりながら死にはしないなっていうのを感じましたし。野球をやらしていただいたので、そこでマネタイズできる部分は早いんですよ。それが今できるからこそ他の準備をしとかないといけないなって。現役の時からそのアンテナだけは張っておいた方がいいんじゃないかなとは思いますね」

香月良仁(かつき・りょうじ)
1984年生まれ、福岡県久留米市出身。日本経済大学(旧・第一経済大学)を経て、熊本ゴールデンラークスからロッテマリーンズにドラフト6位で入団。2016年に現役引退。引退後は熊本ゴールデンラークスに戻り、スポーツ事業などを約3年学んだのち独立。36歳頃に株式会社を設立し、九州各地で投手専門アカデミーを8拠点展開する傍ら、イベント業・建設業なども手がける。2023年から九州アジアリーグの独立球団・佐賀アジアドリームズ監督を務める。

