【令和の断面】vol.61「聖火リレーは五輪のテスト走行」

令和の断面


「聖火リレーは五輪のテスト走行」

 今夏に迫った東京五輪の聖火リレーが始まった。
 3月25日に日本サッカー界の拠点、福島県のJビレッジをスタートした聖火は、7月23日に開会式が行われる国立競技場を目指して、121日間、日本各地を巡っていく。
 第一走者は、2011年に女子サッカーW杯ドイツ大会で優勝した「なでしこジャパン」のメンバーが務めた。
 当時の佐々木則夫監督のもと、宮間あや選手や大野忍選手、安藤梢選手や岩清水梓選手、タレントとして活躍している丸山桂里奈選手など懐かしい顔が揃った。
 スポーツにおける男女平等も今大会の重要なテーマであり、「なでしこジャパン」のみなさんが聖火リレーの先頭を切ったことも、大きなメッセージになったことだろう。
 
 コロナ禍において、「密」を避ける聖火リレー。
 これまでの五輪における聖火リレーとは、まったく主旨の違うスタイルで今回は聖なる火が受け継がれていく。大会に向けて全国的な盛り上がりをつくる。その目的は今回も同じだが、聖火が進む沿道や現場にはできるだけ人を集めないようにしてリレーしていく。それは「静かな聖火リレー」だが、多くの人が集まることもなく熱気に包まれていないから、その役割が小さくなっているかと言えば、果たす使命は、むしろ極めて大事な行事になったと言えるだろう。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大で、聖火リレーだけでなく五輪&パラリンピックの開催そのものに懐疑的な見方がまだまだ続いている。しかも海外からの観戦客は受け入れないことがすでに決まっている。
 状況は、依然として予断を許さない。
 だからこそ、聖火が安全(感染拡大を許さない)な形で全国を回ることに大きな意味がある。
 単に国民的なコンセンサスを醸成するということだけでなく、現実に安心・安全に聖火がリレーされることが実証されなければならないのだ。
 それが直接、五輪を開催することへの理解を生む。
 それゆえに、今回の聖火リレーには、大きな使命があるのだ。
 
 安全な五輪開催に貢献するのは、聖火リレーだけではない。
 それは、開幕したプロ野球やサッカーJリーグなども同じ役割を担っている。
 夏に向かってこうしたプロスポーツが順調に開催され続けることが、多くの人に安心感を抱かせ、スポーツへの理解を深めることに寄与するはずだ。
 そして、そうした知見と実績が五輪やパラリンピックを支えることになる。
 
 聖火リレーやプロ野球などでクラスターが発生することが、もっとも危惧される事態だ。
 
 ここはスポーツ界にとって正念場だ。
 聖火のもとに「ワンチーム」になって、コロナ禍におけるスポーツ開催を何とか無事に進めていく。
 その歩みが、五輪&パラリンピックにつながっていく。
 
 象徴としての聖火リレーが、今回は「安全の実績」を試されるリアルなテスト走行になっているのだ。
 もうカウントダウンは、始まっている。
 何とかこの「火」をみんなで守りましょう。

青島 健太 Aoshima Kenta

昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。

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