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香月良太#2
アジアの選手たちが集まるチームのコーチ就任
「遅くても抑えられる」を選手に見せたかった

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    引退後は酒類営業を経て個人事業主として野球スクールを立ち上げた香月氏。しばらくの間は現役の世界から距離を置いていたが、周囲の声かけと「まだ体が動く」という感覚の中で、弟・良仁氏が監督を務める佐賀アジアドリームズの投手コーチとして戻ってきた。第2回は、投手コーチとしての日々と指導への向き合い方について聞いた。(取材日・2026年4月24日)
     

    ■近鉄、オリックス、巨人を渡り歩いた香月良太さん

    ――引退直後は野球の世界から少し距離を置いていた時期もあったとか。

    「最初はもういいかなとは思っていたんですよ。でもだんだんと、いろんな知り合いから声をかけてもらったり、今回の弟からの話もあったりして。幸い自分もまだ投げられるので、体が動く限りはという気持ちで、少しずつ野球に関わるようになってきた感じですね」

    ――弟・良仁さんが佐賀アジアドリームズを立ち上げたとき、最初からコーチとして関わることは想定していたんですか?

    「全然思っていなかったですね。弟から声をかけてもらって、そこで初めてやってみようかなという気になった感じです。監督が弟ということで、まあ面白いかもな、とは思いましたけどね」

    ――就任して2年ほど経ちますが、昨季まで自身もマウンドに上がっていたとのことで。

    「去年(2025年)まで投げていましたよ。誰もいなくなった時とか、なかなかストライクが入らない場面でという感じで。弟も自分で投げていたので、まあ自分も投げましたけどという感じでした」

    ――独立リーグの打者が相手でも、10年のブランクがあって抑えられるものですか?

    「まあ何回かやられましたけどね(笑)。もちろん現役の頃みたいにはいかないし、球威もないです。ただ、ストライクを入れることと変化球とコースを組み合わせて投げれば打たれなかったので。選手たちがそれを見て、遅くても抑えられるのはなぜだろうと考えてくれるようになったらいいなと思って投げていましたね」

    ――今季は登板の予定はないんですか?

    「今年はピッチャーをいっぱい補強したので、今のところはないですね。それはそれで良かったなと思っています」

    ■多国籍チームへの指導で心がけること――短く、細かく、行ったり来たり

    ――佐賀アジアドリームズにはさまざまな国の選手がいます。コミュニケーションで一番難しいのはどんな点ですか?

    「コミュニケーションが一番難しいですね。特に中継ぎの選手たちは、準備の仕方やタイミングの作り方も最初はまったく分かっていないので、そこはもう分かりやすく、細かく、ベンチと投手の間を行ったり来たりしながらやっています」

    ――指導する際に自分なりに意識していることはありますか?

    「短く、分かりやすく伝えることですね。自分が選手のころも、長くあれこれ言われてもなかなか頭に入らないなと感じていたので。だから一言でも正確に伝える方がいいかなって思っています。コントロールにしても、今からやってすぐよくなるものじゃないから、とにかく毎日触ることが大事だよと。ピッチングも毎日やると痛いという子もいるんですけど、毎日なるべく触らないとうまくなっていかないよとは言い続けています」

    ――コーチになってみて、指導の難しさを感じるのはどんな場面ですか?

    「やっぱり伝えることの難しさですよね。それぞれ性格も違うし、能力も違うので、同じことを言っても受け取り方がまったく変わってくる。そこは正直、まだ試行錯誤しています」

    ――現役時代に影響を受けたコーチはいますか?

    「オリックス時代の清川コーチが印象に残っていますね。普段から自分からあれこれ言ってくれるタイプじゃないんです。でも聞いたらちゃんと答えてくれるし、たぶんずっとよく見てくれているんだろうなと感じていて。今コーチをやるようになって、まずは観察しないといけないんだなというのはその時の影響があると思います」

    ○取材後記
     佐賀アジアドリームズは2023年に発足した九州アジアリーグの独立球団で、監督の香月良仁氏が「従来の独立リーグとは違う切り口」を掲げて立ち上げたチームだ。カンボジアやインドネシアなど野球途上国の選手を積極的に受け入れ、農業ボランティアや地域の困りごと支援といった活動を練習と同等の優先度で位置づけている。試合に勝つことを目指しながら、選手が地域住民と顔なじみになり、チームの存在が地域の日常に溶け込むことを目標に掲げる、国内の独立リーグでも珍しいコンセプトのチームである。
     その投手コーチを担うのが兄・良太氏だ。良仁氏は取材の中で「兄の方が野球の才能も発想も天才的だと思っている。高い技術を持った人間が必要だった」と語り、ピッチング全般を兄に一任していると明かした。良太氏は東京を拠点に酒類営業と野球スクールをこなしながら、月に数回、試合や練習に合わせて佐賀に入る。現役引退から10年近くが経つ今もマウンドに立てる体を維持しながら、若い選手たちに「遅くても抑えられる」ことを体で示し続けているのは、そうした弟の信頼と、自らの矜持があってのことだろう。

    (第3回に続く)

    香月良太(かつき・りょうた)

    1982年7月27日生まれ、福岡県出身。柳川高校でエースとして春夏連続甲子園ベスト8。東芝を経て2004年に近鉄バファローズへ自由枠入団。球団合併に伴いオリックス・バファローズへ移籍し、中継ぎ投手として活躍。2013年に読売ジャイアンツへトレード移籍。通算371試合登板、2016年現役引退。引退後は知人の縁で酒類営業に携わり、現在は個人事業主として東京で野球スクールを週3回指導。佐賀アジアドリームズで投手コーチを務める。

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