【令和の断面】vol.203「少年野球のいま」

令和の断面

 埼玉県草加市で活動を続けている「ニューダイヤフレンズ」という少年野球チームを訪ねた。ある方を通じて「子どもたちに会いに来てください」と声を掛けられたのがきっかけだった。
 自分自身も草加市で育ち、「松原ヤンガース」というチームで野球を始めた。チームは違えど同じ草加の子どもたち。喜んで伺った。

 4月の日曜日、市内瀬崎小学校のグラウンドには20人ほどの選手が集まっていた。みんなが整列して挨拶してくれる。ボクらの頃は、どこのチームでもそんな礼儀正しいことはできなかったが、今は、そういうことがしっかりできる。これも少年野球で身につける大事なことだと言えるだろう。

 国会議員という仕事は、どこへ行っても挨拶が求められる。だから状況に応じて何でも話すが、小学生を前に「本日は晴天に恵まれて……」なんて挨拶をしても仕方がない。
 そこでこの日は、みんなに輪になってもらい、質疑応答、聞きたいことを質問してもらうことにした。

 まず、驚いたことは、みんながとても積極的なことだった。これはもしかすると、このチームの特長であり、いつでも監督やコーチに聞きたいことを尋ねる雰囲気があるからなのかもしれない。

 30分くらい質問に答えたが、ほぼ全員が手をあげて質問した。それもかなり技術的なことを……。

Q 大学とプロ野球で一番違うことは何ですか?
Q プロ野球で一番大変なことは何ですか?
Q 打率を上げるにはどうしたらいいですか?
Q カーブの投げ方を教えてください。
Q メジャーリーグと日本の野球の違いは何ですか?
Q どうしたらフライが上手に捕れますか?

 私はピッチャーではないので、カーブの投げ方は教えてあげられなかったのだが、それ以外の質問には、小学生の立場に立って丁寧に答えた(私の見解が正解だったかどうかは分からないが笑)。

 このチームの監督さんは、これまで何度も優秀な指導者として表彰されている方なので、子どもたちは伸び伸びとしていて、野球が大好きな様子だった。
 たぶん、彼らの世代には、それが一番大事なことなのだと思う。

 監督との話で印象に残ったのは、これまでは1年生にならないと入部できなかったのが、今は就学前の子どもたちもチームに入れるということだった。

 監督は、少し複雑な表情で話す。

 「最近は、入部する子どもたちが年々少なくなっている。他のスポーツも熱心に勧誘している。だから野球がやりたかったら、小学校に入る前でもいいですよ、という体制にしたんです」

 ボクらの時代、「松原ヤンガース」は小学校4年生にならないと入れなかった。
 それより前に入りたがると「もう少し大きくなったらおいで」と入部を断っていたくらいだ。しかし、今は、そんな呑気なことをやっているチームはどこにもないだろう。

 他のスポーツを含め、子どもたちの取り合いになっているのだ。
 時代が変わった。
 ただ、気を付けなければいけないのは、どんなスポーツでも小さな子に早くから無理をさせないことだ。楽しく取り組めれば、後で勝手に上手くなる!
 フレンズの小さな子どもたちは、楽しそうでみんな元気一杯だった。
 何度も言うが、楽しく取り組むことが一番大事なことだ。
 それは全国にグローブを配った大谷翔平選手の願いでもあるだろう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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